ほしぞloveログ

天体観測始めました。


タイトルの通りCGEM IIと260でのおそらく最後の作例となります。対象は M101回転花火銀河で、これも前回のM100に続き、馬頭星雲のついでに後半に撮影していたものです。


反転時のトラブル

ただ、もう1ヶ月以上前のことになるので、ほとんど記憶がないんですよね。唯一覚えていることが、USBハブの破壊です。

IMG_4704
と、こんな感じです。

赤道儀の反転の時にやらかしました。子午線近くになるとNINAが自動で反転してくれるのですが、これまでうまくいっていたので油断してました。富山は日本海側なので、北方向が街で普段は北の空を撮ることはほとんどありません。北の空での自動反転は初めてだったのです。撮影中は自宅からリモートで画像などをちょくちょくチェックしているのですが、なぜかちょっと前から画像が送られて来なくなって「あれ?バッテリー切れか何かか?でもまだ早いな?」と何の気なしに外に出て愕然としました。どうやら反転の際の回転中にケーブルがどこかに引っかかって、引っ張られてしまったようです。上のようにUSBハブのコネクタのところがもげていました。

でもこれ不幸中の幸いで、根元側に繋がっていたCMOSカメラのUSB2.0のコネクタ部や、USBハブの先につながっていたホイール、フォーカサーなどその他の損傷はなかったのです。ひとえに、このエレコム製のハブがこのコネクタ部を弱く作ってくれていたおかげです。接続部を見ても、ちょっとのハンダで固定しているだけで、強度を持たせていないようです。おそらく設計の段階で考えられているのかと思いますが、今回これに助けられました。これ以降もエレコムハブを使うことにすると思います。

根本的な対策としては、引っ張ったら抜けるような構造を途中に入れておくことかと思います。短い延長ケーブルとかでもいいですし、コネクタ変換用のアダプタをうまく使うという手もあるかと思います。USB-Cコネクタなんかはわざとかと思うほど脆弱に作られています。


撮影枚数

こんなトラブルがあり、他のことはほとんど記憶から吹っ飛んでいるのですが、残された画像を見てみると、3分露光で2日渡って撮影していたようです。それでも使える画像枚数は

R: 23/31枚、G: 8/24枚、B: 11/20枚、Hα: 4/10枚

と、トータル85枚で4時間15分撮影して、わずか46枚で2時間18分を画像処理に回すことになりました。これでもかなり甘く採用しているので、本当はもっと落としたいくらいです。Hαは赤ぽちだしだけなのでまだ4枚だけでもいいとして、Gの8枚は少な過ぎです。今回は揺れもそうですが、今見たら1日目に撮った画像はほぼ全滅、薄雲で淡い部分が出なかったのをかなり落としています。本当は撮り増しすべきなのですが、赤道儀も変わるのでとりあえずキリをつけてここまでとします。


画像処理

画像処理はいつものようにPixInsightのWBPPで、前回から始めたDeconvolutionを今回も適用しています。2度目なので少し余裕を持って処理できました。また、EZ Star Reductionで星像を小さくしましたが、今回はかなり小さくなってしまいました。効果の度合いをうまく選べないのが少し辛いところです。

あと、少し画像処理をPixInsightに移していこうと思い、Curve Trasnformationをいじってみました。Saturationを輝度に応じてカーブでいじれるのはPhotoshopではできないので、ここはメリットがあります。でも操作性はやはりPhotoshopの方が上と感じます。例えばPixInsightだとわざわざプレビューを開いて効果を確認しながら試さないといけないとかです。あと、やはりPhotoshopの一番の利点はレイヤーが利用できることかと思います。PixInsightもマスクを駆使することでレイヤーと同じようなことはできますが、やはり操作性は雲泥の差です。ただし、マスクの作成においてはStarNetも含めてPixInsightの方が星に特化されていたりするので、PixInsightで作ったマスクをPhotoshopで使うというスタイルはまだしばらく変わることがなさそうです。


結果

今回は2時間という短い撮影時間だったこともあり、かなりノイジーで苦労しました。結果というと以下のようになります。

Image88_ABE_PCC_DBE_decom_AS_AS_starreduction_SCNR_CT5
  • 撮影日: 2022年3月8日23時26分-3月9日3時26分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、R: 23枚、G: 8枚、B: 11枚、Hα: 4枚の計46枚で総露光時間2時間18分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間 RGB: 0.08秒、Hα: 1秒、 RGBとHαそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

中心部はまだ明るいので細部がある程度出ていますが、外周はノイズ処理をしたので絵画っぽくなってしまったので、いつかリベンジしたいです。まだCGEM IIでの撮影で揺れが残っているので、今後CGX-Lに変更すると中心部ももう少し出るはずです。

いつものAnottationです。
Image88_ABE_PCC_DBE_decom_AS_AS_starreduction_SCNR_CT5_Annotated


それでも以前のTSA120で撮影した結果と比べるとかなりマシになっています。前回も画像処理は苦労した覚えがあり、結構ごまかしてやっとこれくらい出たのだと思います。

light_BINNING_1_integration_ABE_DBE_STR_DBE_STR_SNP_all_PS4_cuts


まとめ

最近ものすごく忙しくて、画像処理とかブログを書く時間が全然取れていません。実際今回も1ヶ月以上前の画像です。撮影したらその場でいいのすぐにメモ程度でも書いておいた方がいいですね。

さて、次からはいよいよCGX-Lで撮った三つ子銀河の画像処理です。でもその前に色々やりたいことがあって、時間が足りるかちょっと心配です。


 

前回、SCA260で撮影した馬頭星雲のことを記事にしましたが、3月のオリオン座は早くに西の空に傾くため、後半は別の天体を撮影することにしました。撮影が複数日にまたがっていたので、フラットやダークが使いまわせるよう、基本何も変えない同じ露光時間、同じゲイン、同じカメラ回転角が条件です。

少し迷ったのですが、M100に決めました。理由は
  1. 春の銀河まつりに参戦するのは今年の目標の一つであること
  2. M33などの大きな銀河はすでに試したので、少し小さめの銀河を試したかったこと
  3. 以前おとめ座銀河団を広角で撮影した時にM99やM100が小さいながらもかっこよかったから
などです。

 


まだ赤道儀はCGEM IIで撮影したときのものです。撮影は3分露光です。M100は小さいので真ん中らへんに小さく写っているだけです。これで分解能が出るのかが今回の勝負です。

でも結論だけ言うと、撮影した画像を見て早々と勝負に負けました。やはりこれくらい小さい天体を撮ろうとすると、揺れが大きすぎるのです。


撮影のことはもう忘却の彼方に

撮影は3月3日と3月9日の二日に渡りました。最初の3月3日の方はまだ使えたのが
  • R:18/20枚、G:20/20枚、B:20/20枚
とマシでしたが(それでもかなり甘い判断です)、3月9日の方は(もう忘れてしまいましたが、風が多少拭いていたのかと思いますが)使えたのがわずか、
  • R:4/12枚、G:2/10枚、B:4/35枚
と散々でした。画像を見ていると、大きく揺れて2つの点になってしまっているのが多かったです。これを見て、さすがにCGEM IIで系外銀河の分解能に挑戦するのは辛いことが実感できました。まあ、頭では何となくわかっていたのですが、信じたくないバイアスがかかっていたのかも...。

本当は3月3日の撮影でBがまだまだノイジーだなと思い、3月9日はBを重点的に撮り増ししたのですが、使えたBはわずか1割と、この揺れのおかげであまりやる気が起きずに、実際の撮影からかなり日にちが経ってしまいました。とりあえず見えるだけでいいやと重い腰を上げ、やっと画像処理を進めることにしました。


WBPPの変化

PixInsightのWBPPですが、最近いくつか気づいたことがあります。まずBiasファイルですが、これはDarkファイルがBaisを含んでいるために、もう処理には使われていません。CalibrationタブのDark設定のところであえてBiasを含まないというオプションを使うと、「検証の結果、biasを引いたダークは今後はお勧めしない」と怒られてしまいます。かといって、Biasファイルを全く指定しないとエラーで止まったりするので、Master Biasをおまじないで登録しておくことにしています。ちょっとまだ整合性が取れていないようです。

あと、Pedestalというのを入れてみることにしました。これは画像処理の過程で0以下の輝度になることを防ぐようです。
WBPP
最近のWBPPでの設定。

Reference画像をオートで選ぶと、たいていRとかの明るく画質がいいのを選んでくれるのですが、これを基準にしてしまうと例えば暗いBがIntegration時に大量に弾かれてしまうことがわかりました。実際にIntegrationされたのはわずか
  • R:21/22枚、G:16/22枚、B:11/24枚
でした。これは前回の馬頭星雲でも同じことが起きていて、原因がわからなかったのですが、Reference画像をマニュアルであえて暗めのものを選ぶことで回避できることがわかりました。その結果、
  • R:22/22枚、G:22/22枚、B:24/24枚
と全てIntegrationに回りました

RGB合成した画像を見てみると、揺れが平均化されているせいか、かなり真円に近くなりました。
Image27_ABE_PCC_crop_DBE_mosaic01

これだといいと思ってしまうかもしれませんが、一枚一枚は揺れていることと、大きく揺れることもあるので採択率は悪いし、何より銀河の解像度は出ていないはずなのでやはりダメです。


EZ Deonを(少しだけ)使ったdeconvolution

今回の画像処理のポイントは、PixInsightでDecomvolutionを試してみたことです。実はこれまで何回も試していたのですが、一度もうまく行ったことがなく、今回ScriptsにあるEZ Deconを使うことではじめておかしくない結果が得られました。

そもそもDeconvolutionはPSFをあらかじめ作るとか、StarNETであらかじめマスクを作っておくとか、R Range maskが必要とか結構面倒です。しかもマスクをの微調整で結果が劇的に変わったりします。参考にしたのはniwaさんのページ


相変わらずものすごく親切な説明で、素晴らしいです。とても感謝しています。さらにはリンギングを無くすために皆さんでいろいろ議論されたことも、最後の方のリンク先から辿ることができ、かなり実用的です。

それでもこのDeconvolution、なかなかうまくいかないんですよね。なので今回EZ Deconという簡単にdeconvolutionを試すことができるスクリプトを使いました。EZ DeconはEZ Processing Suiteの中の一つで、インストール方法はこちらを見るとわかります。


上のページは英語ですが、niwaさんが日本語でも解説してくれています。


EZ Deconを走らせると、こんな画面になります。
decom1

最初はよく分からないのでおもむろに「How to use EZ Decon」というヘルプボタンを押します。読んでいくと以下のようなことが書いてあります。

1. まずは処理したい画像(リニアステージのもの)を選択し、Star Maskを作れと言います。このスクリプトはまだStarNETのV2には対応していないようなので、今回は別途StarNet  V2で星マスクと作っておいて、スクリプト中で選択しました。

2. 次のレンジマスクはこのスクリプトでおまかせして作ってもらいました。

3. 最後「Deconvolution」タブをに移って、PSFを作れとのこと。なんとこのスクリプト、PSFが「Generate PSF」ボタン一発でできてしまいます。これはかなり楽です。

4. ここからがすごいです。deconvolutionを試すのですが、「Evaluate EZ Decon Run」ボタンを押すたびにタブが増えていき、右の方の「Change Tab to Original」ボタンと「Change Tab to Decon Run XX」ボタンを交互に繰り返し押すと、オリジナルとの違いを簡単に切り替えて比較することができます。基本的に変更できるパラメータはスターマスクをどう扱うかのみ。ヘルプに書いてますが、スターマスクを強調したりソフトにしたりすることで結果の違いを見ます。
  • もし画像がノイジーになるなら、Wavletの強さ(strength)を増やす。
  • もし画像がシャープになりすぎるなら、繰り返し(iteration)の数を減らす。
  • もし恒星にリンギングが出るなら、Star Maskの半径を増やして、恒星をよりカバーする。
とのことです。

5. うまくいきそうなら、最後に下の「Run EZ Decon」を押して実際の画像に反映させます。

でも結局このEZ deconでは、どうしても最後までリンギングが残ってしまい、結果は使わなかたんですよね。その代わり、EZ deconで生成されたPSF画像を使い、niwaさんが解説してくれていた、このページ

のもりのせいかつkさんのGlobal dark 0方法でやることで、リンギングを抑えてうまく細部を出すことができたようです。

decon_comp

左がDeconvolution前、右がDeconvolution後です。EZ Star Reductionもかけてしまったので、恒星の大きさは無視してください。銀河の細部は多少出てるようになったと思います。

というわけで、このEZ Decon、結局は簡単PSF生成ツールとしてしか使いませんでしたが、スターマスクの効き具合の感覚とかを気軽に試して、振る舞いを理解するのにはすごく役に立ちました。deconvolutionで困っている人は、一度同じように試すといいのかもしれません。

ところで、DeconvolutionのLocal supportというのがいまいち何をしているのかわかりません。スターマスクをリンギング防止に使っているのなら、恒星自身のdeconvolutionができていない気もするのです。実際、恒星がスリムになったような効果は見えませんでした。そういうものなのか、それとも撮影条件が悪くあまり効かないのか、もう少し理解する必要がありそうです。

その後、ものはついでにEZ star reductionも適用しました。以前、トール兜星雲の時にも試しましたが、その時はそこまで有用性は見出せませんでしたが、今回はかなりの効果があったようです。


いつものPhotohopでの仕上げ

あとは普通にPhotoshopに持っていっての処理でしょうか。今回少し違ったのは、Photoshopで細部があまり出せなかったことです。すでにdeconvolutionである程度の細部出しができているためでしょうか。試しにdeconvolutionなしの画像をPhotoshopに引き渡し、いつも通り加工するのですが、こちらは細部が出てきます。ですが、出来上がった画像の細部はほぼ同等でした。細部をどこで出すかだけの問題で、その画像が持っている限界があり、ポテンシャル以上のものは出ないということがよくわかりました。まだまだDeconvolutionをたいして試していないので、少し甘い気もしますが、むしろ自然な処理具合な気がしています。今後は(やっとですが)Deconvolutionの方に移行していくことになると思います。

結果です。

「M100」
Image27_ABE_PCC_crop_DBE_decom_stredu_ABE_PCC6
  • 撮影日: 2022年3月3日23時51分-3月4日4時37分、3月10日2時54分-5時1分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、R: 22枚、G: 22枚、B: 24枚の計68枚で総露光時間3時間24分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間 RGB: 0.08秒、RGBそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

実は赤ポチとか青ポチとか期待してHαとOIIIも撮影したのですが、枚数が少なすぎで諦めました。M100の周りの淡いところがもう少し出るかと期待していたのですが、少し露光時間が足りないのかもしれません。もしくはゲインを例えばもう3倍とか上げた方がよかったかもしれません。

恒例のAnnotationです。M100の他にもNGC4312を始めいくつか銀河があるのがわかります。

Image27_ABE_PCC_crop_DBE_decom_stredu_ABE_PCC6_Annotated

最後に、FS-60CBで撮影した時画像
up_DBE_DBE_PCC_AS_HT_all_disks_back2_rot_denoise_larage_cut
からM100の同じ領域を抜き出して拡大してみます。
FS-60

回転して向きをあわせてますが、左端は映ってない領域でした。恒星はまだいいとして、FS-60CBで撮ったM100の解像度が良すぎてなんか怖いです。


まとめ

撮影途中で揺れているのがわかってしまい、あまりやる気の出なかった画像処理ですが、やってみると意外に実のあるものでした。これまで何度も試してことごとく諦めていたDeconvolutionですが、今回のこのEZ Deconでできなかったらもう2度とやらないかもしれないと思いながらやりました。まだ満足とはいきませんが、今後続けていく気にはなりました。それでもFS-60CBで撮ったのが今思うとすごすぎます。SCA260の口径が大きくてもまだ揺れが大きくて性能出しきれていないのでしょう。

まだCGEM IIで撮影した、M101が残っています。サクッと終わらせたいのですが、とにかく忙しくてなかなか時間が取れません。某天文雑誌の原稿もやっと目処がついてきました。その後、晴れてやっとCGX-Lで三つ子銀河と、M51の画像処理ができます。



CGEM IIの限界

SCA260を耐荷重ギリギリのCGEM IIに載せた時の振動問題。いろいろ対策はしてきましたが、この間ちょっと小さめのM100を撮影してみると、どうしても揺れが目立ってしまい、やはり限界を感じてきました。M100の画像処理はまた別記事にするとして、これまで作例として出してきたM33馬頭星雲など、ある程度画面いっぱいに広がるものは多少のごまかしが効きます。でもNGC253とか、もっと小さな銀河を目指そうとすると1分露光くらいが限界で、それ以上ではどうしても揺れが目立ってきてしまいます。


サイトロン本社にて

今後の長期的なことも考えて、もっと頑丈な赤道儀、例えばEQ8を念頭に色々考えていました。そんな折、CP+の収録でサイトロン本社に立ち寄る機会があって、昨年購入させて頂いたSCA260の結果共々、振動のこととを話していると「EQ8でいいのがありますよ」という話になったわけです。実際に展示してあったEQ8Rを触らせてもらいましたが、ちょうどSCA260が搭載されていて、触ってみても揺れそうな気配が全然なく、もう羨ましい限りでした。でも内情はというとサイトロン訪問の数日前に雪道で車で事故を起こしてしまい、車を買い替えなくてはならなくなり、妻からは「しばらく天文機材禁止」とのお達しが出てしまっていたのです。なのでEQ8などしばらくは夢のまた夢です。

そんな恥ずかしい話をしていると「CGX-Lはどうですか?」という話になりました。皆さんご存知の通り、サイトロンは長い間セレストロンの代理店でした。その当時の展示品の一つか何かで、以前から故障していて使えるかどうかもわからないものだそうです。ジャンクとして自分で直して使うのなら格安で譲ってくれるというのです。

少しだけ動かしてもらうと、何やらエラーは出ていますが、モーターは一応回転します。エラーをスキップして初期アラインメントを試しても何か動きはします。聞くと「エンコーダーを交換したり色々やってみたが、それでも直らないのでもう使う予定はない」とのこと。「物としては大きく場所もとっているので、もし自分で直してみる気があるなら...」ということなので、速攻で「やってみます」と返事をしました。そもそも、自作で大型のイギリス型の赤道儀でも作るしかないかと思っていたくらいです。動けばラッキー、ダメでも基本構造はそのまま使えるでしょうという目論見です。


どデカい箱が到着!

その後何度かやりとりをし、保証も修理もサポートもできないけれどという約束で、本当に格安で送ってもらうことになり、待つこと数週間。3月26日の土曜日の朝、とうとう自宅に届きました。配送のお兄ちゃんは力もありそうでしたが、それでも流石に大変そうなくらい大きな段ボール箱なので、一緒に手伝いながら家の中へ運びます。大きな箱が2つと、小さくて重い箱がひとつ。赤道儀、三脚、ウェイトでしょうか。

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靴と一緒に撮りましたが、そのとんでもない大きさがわかるかと思います。

一番大きな箱から開けてみます。
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どうやら三脚のようです。それにしてもでかい。これまでのAVXやCGEM IIのものと違い、内側に開き具合を制限するフレームが付いているのと、3本の脚をまとめるベルトのようなものが付いています。

広げて玄関に置いてみます。
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脚の太さは5cmから7cmに変わっただけとのことですが、とてつもなくゴツく見えます。

もう一つの大きな箱の赤道儀も出してみます。
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テーブルの上に置いてみましたが、隣のMacBook Proと比べてもその大きさがわかるかと思います。ただ、持ち運びに関しては取っ手が上下についていてバランスよくしっかりつかむことができるので、実際の重さと比べても幾分楽になります。また、このようにテーブルの上にまっすぐ置くことができるのもありがたくて、メンテナンスが楽になります。普通は赤道儀の下は平ではなく、メンテナンスで稼働させようとすると結局三脚の上に乗せる必要があったりします。

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細かく工夫されているのは、水平調整のネジの先端が丸くなっていることでしょうか。
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CGEMIIの水平調整ネジも先端はある程度加工していますが平な部分がわかります。一方、CGX-Lのほうは完全に球面になっています。

三脚と赤道儀を取り出した空箱ですが、うまく入れ込むと赤道儀の大きな箱と中身、ウェイトの小さい箱がちょうど丸々三脚の箱の中に入ります。赤道儀の二重箱の外側の箱は入らないので畳んで上に置くなどする必要がありますが、かなりコンパクトになります。

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と言っても、一つでもまだ大きいことには違いありません。

さて、赤道儀を実際に三脚に載せてみます。赤道儀の固定は横三方向から付属のM8ネジで止めることになります。その際、手で回すだけではガタついてしまうので、毎回六角レンチで締める必要があり、ちょっと手間です。
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こうやって3台並べると、今回のCGX-Lがあからさまに大きいことがよく分かります。3台同じメーカーで並べると壮観で、さながら展示場みたいでしょうか(笑)。その後、まだ繋がっていないハンドコントローラーと、電源ケーブルを電源と繋ぎ、動作確認となります。


動作チェック

ここからは賭けになります。動けば以前のPSTジャンクみたいに超ラッキー、動かなければ大きな置き物にもなり兼ねません。

まず電源を入れると、早速エラーメッセージが。写真はDecですが、何度か試すと、RAの時もあります。
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これをそのまま進めると、DECの回転が始まり、矢印ボタンで止めたりしない限り、ずーっと動き続けます。RAの時も同様で、何かしない限りは止まりません。どうもこの機能、電源を入れたら自動的にホームポジションに移動するという、CGX以上で搭載されている目玉の機能のようです。この機能があるために、赤経も赤緯も初期位置を示す三角マークとかが見当たりません。自動でホームポジション状態になるので、そのようなマークは必要ないということみたいです。

とりあえずBackボタンでスキップできるようなので、何度かBackボタンとEnterを押して次に進みます。するとCGEM IIの初期画面と同じになります。ここからさらに進め、(昼間の確認なのでまだ確実ではないですが)ベテルギウスで初期アラインメントを取ってみると、どうやらそれらしい方向を向くようです。その後、耳を澄ますとジーッという音がしているので、追尾も一応動いているようです。

この時点でエラーが出るのはエンコーダに問題があるのではと推測しました。そこで、Stellariumで赤道儀と接続して信号がどう出ているのかチェックしてみることに。初期アラインメントで赤道儀はすでにベテルギウスらしい方向を向いています。この状態でStellariumを赤道儀に接続すると、なんとStellarium上では既にベテルギウスにいると指し示しているではないですか!これは明らかにエンコーダーは生きていることを示しています。ここから考えるに、どうもエンコーダの故障とかではなく、CGX以上では初期位置確認のセンサーが独立にあって、今回はこれがなんらかの理由で働いていないようです。

言い換えると、エンコーダも動いているので、最初のホームポジションへ行くのさえ手動でやってしまえば、あとはガイドやプレートソルブさえも動くかもしれません!


トラブルシューティングの一例

ここで一旦動作確認を終えて、電源を入れ直しエラーについてもう少し把握することにします。まず、ハンディーコントローラーに問題がないか試します。

同じメーカーの機器を使い続けることの利点の一つが、共通の部品を使えることです。今回は、コントローラーが計3つあるので、CGEM IIのものとAdvanced VXのものに順に交換してみました。コントローラーによってはなぜか赤緯モーターが回らないことがありましたが、エラーメッセージはどのコントローラーでも出るので、コントローラーが原因とは考えにくく、CGX-L本体からエラーが発生している可能性が高いという結論を出すことができます。

何度か電源を入れると、たまにCGX-Lと認識されずに、機種がわからないか、オリジナルのGTとして認識されることがありました。この時はCGX-Lのバージョンなども不明と出てしまうようです。これは電源を入れ直すことでCGX-Lと認識されたのと、頻発するようではないので、まあ放っておくことにしました。

さて、こういった時のトラブルの際の解決方法の例ですが、まずは表示を日本語から英語にします。出てきたエラーメッセージをGoogleなどで検索すると、日本語のページでは引っかかりませんでしたが、海外には同じような状況になっている人が何人かいるようです。その中で、Cloudy Nightsにドライバーのアップデートで解決したというのがまず見つかりました。そのため、CelestronのFirmware Managerを使いハンドコントローラーとCGX-Lのドライバーを最新のものにアップデートします。

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この時少し失敗して、もともとどのバージョンが入っていたか確認するのを忘れてしまいましたが、とにかく繋がっている機器(今回の場合はハンドコントローラーとCGX-L)のファームを最新のものに置き換えてくれるようです。アップデートが終わると、更新された様子が表示されます。
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ただしこれ、ハンドコントローラーで確認すると違う数字が出るのですが、まあ気にしないでおきましょう。
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少なくともFirmware Managerで出てきたバージョンはCloudy Nightsで示されたものより新しいので、大丈夫でしょう。

さてこれで再度電源を入れ直します。結果はというと、やはりまだ同じエラーメッセージが出ます。念のため工場設定に初期化することなどもやってみましたが、それでもダメです。

どうもファームのせいではなさそうと判断し、もう少し探ります。すると、ケーブルが抜けているのが原因だったという投稿がCloudy Nightsに見つかりました。構造的にケーブルがねじれて抜けるか切れるかする可能性があるとのことです。さらにそのリンク先を辿っていくと、CGXの全バラ写真が大量に投稿されているページに行き着きます。CGXとCGX-Lは三脚の違いが主なので、このページはかなり助かります。

どうやら一部分解してケーブルのチェックをすることで何とかなりそうな目処がついてきました。実際の分解は次回時間がある時にやるとして、この時点で天気が良さそうなので外に出して実際に設置してみて、できれば撮影まで試してみることにしました。


外に出してみる

まず移動ですが、少なくともCGEM IIのように赤道儀と三脚を一度に運ぶことは到底できません。重さもそうですが、大きすぎて赤道儀があると三脚を掴むところまで手が届きません。運ぶときは3つのネジを六角レンチで緩めて一旦外し、別々に運んでまた組み上げてネジを締める必要があります。両手で持てる2つの取っ手がついていることと、赤道儀の下面が平らなので、そこら辺に置くことができるので、運搬に関しては思ったより苦にはなりません。

その上にSCA260を載せてみました。これまでのCGEM IIよりもかなり位置が高くなるのですが、鏡筒にも取っ手をつけているのと、同時に下側のアルミプレートの先端を持つと斜めに傾けながら持ち上げることができるので、そこまで無理することなく赤道儀に取り付けることができます。標準で10kgのウェイトが付属しているのですが、かなり端の方に固定するとこのウェイト一つでバランスを取ることができました。また、鏡筒を載せた状態で脚の一本を持ち上げ、水平を撮るために脚を伸ばしたりすることもできました。とりあえず、思ったより持ち運びと設置は大変ではなく、遠征に持って行くのも無理ではないなとの感想です。

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SCA260を乗せた後に、実際に突っついて揺らしてみました。明らかに揺れが小さいです。全く揺れないわけではないのですが、共振周波数が高くて揺れがすぐに収束します。もしうまく動いてくれるならですが、これは期待できそうです


極軸調整

暗くなってきたので、次はガイド鏡を取り付けてのSharpCapでの極軸調整です。ほとんどの過程は問題なかったのですが、最後に固定ネジを締めると角度がずれてしまうことがわかりました。垂直は2つのネジを手で締めて固定、水平は4つのネジを六角レンチで締めて固定します。この時、最後の最後のキュっと締めるときにどうしてもずれてしまいます。そのため、そこそこ極軸が合ってきたらある程度ネジを締めてしまい、最後はあまりきつく締めすぎないようにそこそこ固定することで、ズレを抑えて極軸を合った状態に保ちました。


実際に天体を入れてみる

その後、あらかじめ赤経赤緯ともにホームポジション付近に固定してから、赤道儀の電源を入れます。昼間に試したようにポジションエラーをスキップして、あとはこれまでのCGEM IIと同様にワンスターアラインメントでベテルギウスを導入、自動追尾といきます。少なくともみている限り特に問題はないようです!

ハンドコントローラーのUSB端子とPCを接続して、SharpCapでプレートソルブも試しましたが、全く問題なく赤道儀に信号を返して位置補正までしてくれました!

また、PHD2を使ってオートガイドも試してみました。ここで一つ問題発覚です。どうも赤経方向に周期的に揺れが出ます。
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上の写真のグラフの横軸は全部で400秒ですが、左から真ん中にかけてに10秒くらいの周期で大きな揺れが出ているのがわかると思います。(追記: その後調べましたが、CGXでちょくちょくこの現象出てくるようです。赤経のみで赤緯での報告は見つかりませんでした。なにか根本的に理由があるのかもしれません。)その結果として、右の同心円グラフでみても横方向に大きな幅が出ているのがわかります。その時の撮影画像が下になりますが、やはり一方向に伸びているのがわかります。この方向は赤経方向に一致します。

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ここで露光時間を1秒から0.2秒することで周期的な揺れを抑えることができました。上のPHD2の画面の途中で変えたので、グラフの半分くらいから右側で周期的な揺れが減った様子がわかるかと思います。

その後、いくつか設定を変えて続けてみたのが下の写真になります。露光時間以外もいじっているのがわかるかと思います。
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結果として、同心円でみても縦横のバランスが取れた状態になったことがわかります。


フルサイズでの四隅の状態

その後カメラにフルサイズセンサーの借り物のASI2400MCを使い、バラ星雲を導入し撮影まで試してみました。揺れの影響を見るために、3分、5分、10分と撮影しました。

3分露光。
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5分露光。
_2022_03_27_21_31_48_NGC_2237_LIGHT__9_90C_300_00s_G150

10分露光。
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なんと、驚くことに10分でも4隅までほぼ真円を保っています。思わずヤッターと叫んでしまいました。これはもう十分すぎるほど満足な結果です。これまでの苦労が何だったのかというくらいです。でもだんだん改善されていく様子はものすごく楽しかったですし、またこれまでの苦労があったからこそ、このありがたみが実感できるのかと思います。

もう少し見てみます。3分と10分を比べると、3分の方が星像が鋭いこともわかります。これはシンチレーションなども合わせた揺れが積分されたため、長い時間の露光の方が大きくなってしまったのかと思われます。


いよいよオフアキを本格稼働か

その後、もう一つ気づいたことがありました。上で喜んだ後、三つ子銀河を導入し、実際に長時間撮影を試み何枚か撮影していると、途中から複数枚にまたがって斜めに大きく流れはじめたことに気づきました。

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このフレームの少し前に子午線を越えてしまっていて、それが原因なのかわかりませんが、PHD2で見ても流れていないので、何らかのたわみが発生し始めたのかと思います。赤道儀を反転したらこの流れは無くなりました。今のところはっきりとした原因は不明ですが、もしたわみだとしたらいよいよオフアキの出番となります。


今後

とりあえず今回はここまで。初期ホームポジションの移動以外はすでに実用的にも問題なく、十分振動が抑えられてかなり満足なのですが、やはりきっちり直したいので、次は分解してエラーメッセージが出なくなるか試してみます。








3月3日にSCA260で撮影した馬頭星雲。



作例として仕上げるために、合計6晩も撮影を続けました。 


目的

今回の目的は、
  1. ある程度振動対策を施したSCA260で、3分露光で多数枚スタックしてどこまで恒星が点像に迫れるか見る。
  2. 馬頭星雲の、特に本体の暗黒帯部分で、細部がどこまで出るか見る。
  3. 近くのアルニタクのゴーストを抑えることができるか?
  4. 馬頭星雲のすぐ下のNGC2023の青がどこまで出るのか見る。
などです。


長期間撮影

さて6日に渡って撮影を続けた理由ですが、この時期のオリオン座は早い時間に西の低い空に傾き、高い位置で撮るには時間が限られてしまうからです。実際、6晩のうち前半3晩は、曇っていたりでセットアップに時間がかかり、撮影開始時刻が21時とか22時以降になってしまい、かなり低空での撮影からになってしまいました。後から見返すと低空の霞や雲のせいか、背景が明るすぎて星雲本体が淡くしか出ていなかったり、画面にムラがあったりしたため、3晩分の画像はほぼ全て処理には使えませんでした。


アルニタクとの攻防

特に不思議だったのが、最初の2晩にだけアルニタクのゴーストが顕著に出てしまったことです。というより、最初にゴーストを見たときに、これをどうやって除去したらいいのか真剣に悩んだのですが、フィルターなど設定を全く変えることなく後半の撮影ではゴーストが消えていました。やはりかすみのせいなのでしょうか?これはいまだに理由がわかっていません。

Image101
上部に大きな輪っかのようなゴーストが出てしまっています。

さらに、アルニタクの周りに青い光芒が見えますが、これは高度が高い場合には出ることがなくなりました。こちらは低空の霞で散乱されて出てきていたのかと推測します。

光条線は最後まで残ってしまいました。だいこもんさんが光条線を短くする方法を提案してくれてましたが、これくらい輝度差がある恒星が画角近くに入ってくる場合は試す価値がありそうです。




振動について

今の赤道儀CGEM IIに重いSCA260を載せると振動はどうしても残ってしまいます。これまで鏡筒の軽量化を中心にいろいろ振動対策はしてきましたが、やはり露光時間1分程度が実用範囲、今回のように3分露光だと採用率がかなり下がってしまいます。風がほとんどない場合でも揺れは残るので、風が強い日はほぼ全滅です。ただ、揺れの方向はある程度ランダムになっているので、多少星像が歪んでしまっても多数枚のスタックで平均化され、仕上がりはマシになると思います。


画像処理処理に使った枚数

撮影枚数は、使わなかったものを含めると
  • R: 48枚、G: 66枚、B: 61枚、Hα: 58枚
となります。3分露光なので、
  • R: 144分、G: 198分、B: 183分、Hα: 174分で、合計11時間39分
とかなりの長時間になります。そのうち、ある程度まともで使おうとしたものが
  • R: 22枚、G: 31枚、B: 31枚、Hα: 35枚
となります。落とした画像のほとんどは6晩のうちの前半3晩のもので、撮影開始時間が遅くて低空の霞などのためです。前半3晩は撮影枚数、採択率も散々で、わずか
  • R: 0/12枚、G: 3/10枚、B: 3/10枚、Hα: 4/22枚
というものでした。後半の3晩は、前半の反省から早い時間に準備したため、一気に撮影枚数と採択率があがり、
  • R: 22/36枚、G: 28/56枚、B: 28/51枚、Hα: 31/36枚
となりました。後半使わなかった画像の多くは、やはり時間が遅くなり低空になってしまったものです。それとは別に、揺れてしまって使えないものがありましたが、それらの率はそこまで多くありません。

さらにですが、使おうとした枚数とPixInsightで実際に使われた枚数は少し違って、
  • R: 22枚、G: 30枚、B: 22枚、Hα: 23枚
枚でした。registeredフォルダを見ると実際にスタックされた枚数が判明します。BとHαがかなり落とされてしまいました。今まで気づいたことがなかったのですが、スタック時など特に位置合わせがうまくいかない時に弾かれるようです。なので今回は合計時間は思ったより少なくて、合計291分で4時間51分でした。パラメータをいじることでもう救い上げることができそうなのですが、もしかしたらこれまでの作例でもPIに登録した枚数より実際にスタックされた枚数のほうが少なかったケースがあるのかもしれません。


西の低空の影響

少し西の低空の影響がどれくらいあるのか見てみます。

1. まず、3月9日の19時13分と22時41分をB画像で比べてみます。19時のをオートストレッチにかけて、同じパラメータを22時のものに適用しました。

19時13分のB画像。
2022-03-09_19-13-08_IC 432_LIGHT_B_-10.00C_180.00s_G120_0005

22時41分のB画像
2022-03-09_22-41-21_IC 432_LIGHT_B_-10.00C_180.00s_G120_0004
明らかに22時台のほうが明るくなり、馬頭星雲が薄くなります。一番のポイントはNGC2023の写る範囲がせまくなっていること。

2. 続いて、3月10日のRを20時16分と22時53分で比較します。

20時16分のR。Bより馬頭星雲がクリアに出ているのはわかりますが、星の数が全然増えています。
2022-03-10_20-16-58_IC 432_LIGHT_R_-10.00C_180.00s_G120_0000

22時53分のR。この日は西が相当明るかったようです。
2022-03-10_22-53-37_IC 432_LIGHT_R_-10.00C_180.00s_G120_0009

これをオートストレッチしただけだと同じような明るさで比べることができます。
2022-03-10_22-53-37_IC 432_LIGHT_R_-10.00C_180.00s_G120_0009_STF
明らかに淡いのとともに、画面にムラがあるのが分かります。薄い雲のせいでしょうか?

3. その一方、同じ3月10日のHαだと背景に差があまり出ません。

19時45分と
2022-03-10_19-45-11_IC 432_LIGHT_A_-10.00C_180.00s_G120_0000

22時21分です。
2022-03-10_19-45-11_IC 432_LIGHT_A_-10.00C_180.00s_G120_0000

あまりに背景の明るさが変わらないので、最初ミスかと思って再確認しましたが、やはりきちんと19時のパラメータで22時のもストレッチされてました。背景光の影響があまり出ないのはやはりナローバンドの威力と言っていいのでしょうか。背景光の明るさに差はなくても、細部ので方はきっちりと差が出ていて、やはり高度のある19時台の方が細かいです。あと、恒星の数がRに比べてかなり少なく、GやBと同程度です。波長から考えたらRに近い数が出ると思ったのですが、Hα以外の赤い領域でも多く光っているためRと差が出たということなのかと思います。

赤に比べて波長の短い青は低空でより散乱しやすいので、やはり青を出したいときはできるだけ高度が高いところで撮影するのが良さそうです。また、RでもHαでも細部の出方は結構違うので、こうやってみるといずれにせよ高度のあるところで撮るのが有利なのがわかります。


7nm Hαフィルターの効果

実はナローバンドフィルターをRGBと混ぜたのはまだほとんど経験がなくて、M33の赤ポチで混ぜたくらいです。そこで、ちょっと蛇足ですが今回使った7nmのHαフィルターを使うとどれくらい得するか、簡単に見積もってみたいと思います。

可視光が400-750nmと仮定して、光量が波長によらずに平均的に広がっていると仮定します。Hαが7nmなので、波長だけで単純にフィルターなしの場合と比較すると7/350 = 1/50と背景光は50分の1程度になるわけです。フィルターなしで撮影する場合に同程度のクオリティーにしようと思うと、50倍の時間をかける必要があります。

これは次のように考えることができます。シグナルに当たるHαはフィルター有り無しで変わらないとして、背景光が50倍だとしたらスカイノイズはルート50~7倍程度増えます。Hαフィルターをつけた場合に比べて、フィルターなしの時は、背景光ノイズに関してはルート50倍ノイジーだと言うことです。ルート50倍ノイジーなものを、同程度にするためには50倍の露光時間にする必要があり、そうすると信号は50倍ノイズはルート50倍になるので、S/N(Signal to Noise ratio)では50/ルート50 となり、ルート50倍得するというわけです。

Redフィルターの透過範囲が600nmから700nm程度なので、それとHαと比べても100/7で15倍程度となり、背景光に関してはRフィルターで15倍程度の時間をかけて、今回のHαと同程度となります。うーん、これはかなり大きな差ですね。この明らかにS/NのいいHα画像をどうやって混ぜ込んでいくかがキーになるのかと思います。


画像処理

RGBの画像処理はこれまでと特に変わりはありません。PixInsightのWBPPです。

初日の画像だけで処理した低い空のものはこのページの一番上の画像なんですが、強度のすとれっちをかけてあるので、普通のオートストレッチで見てみます。
Image101_STF
赤が弱く、アルニタクのゴーストと青い光芒が目立ちます。その一方、NGC2023の青が不十分です。

次はここまで使ったRGBをほぼ捨てて、オリオン座が高い空の時にRGBをほぼ全部を撮り直した場合です。NGC2023がかなりはっきりしてきました。アルニタクのゴーストが(なぜか)消え、青の光芒もなくなりました。赤もはっきりしてきました。結構いい感じですが、左下辺りにどうも緑のムラがあります。

Image17_PCC

ちょうどこの時期にPixInsightの1.8.9へのアップデートがあり、WeightedBatchPreprocessing Scriptにlocal normalizationが加えられたとのこと。local normalizationはこれまで使ったことはありませんでしたが、薄雲越しのムラができやすい撮影や、複数の日にまたがり条件が変わる撮影などの場合に、状態を合わせてくれる処理のようです。WBPPの中で自動で行われるとのことなので、実際にオプションをオンにして試してみました。

アップデート前(上)と後(下)でG画像を比較してみます。
masterLight_BIN-2_EXPOSURE-180.00s_FILTER-G_Mono

masterLight_BIN-2_EXPOSURE-180.00s_FILTER-G_Mono_1
他は特に何もしていませんが、明らかに違いますね。ムラがかなりきちんと撮れてストレッチに伴い細部がかなり出ています。このG画像を使ってRGB合成した結果は以下のようになり、かなりまともになってきました。

Image34_PCC

まだBに少しムラがある気がしますが、B画像はアップデート前後でほとんど違いが出ませんでした。とりあえずまだ不明な点も多いのですが、今後理解していきたいと思います。

RGB画像はPixInsightでストレッチまでして、Starnet++ Ver.2で恒星と背景を分離して、Photoshopに引き渡します。Hα画像もストレッチまでして、同様に恒星と背景を分離します。

恒星に関してはPCCを施したRGBの色が正しいと仮定して、Hαの恒星は捨てることにしました。Photoshop上でHαg像をレベル補正を使いRに変換し、それを「比較(明)」でレイヤーとして重ねます。元のRをを調整することで重なり具合を調整できますが、Hαの細部の暗い部分が鈍ってしまう可能性があるので、もう少しいい方法を見つける必要がありそうです。もちろんPixInsightの段階で重ねてもいいのですが、後に微調整をしたくなることを考えると、現段階ではPhotoshop上で処理してしまった方が楽そうです。


結果

最終的にできた画像が以下になります。

「IC434: 馬頭星雲」
Image34_PCC_AS_HT5a_cut
  • 撮影日: 2022年3月3日22時46分-23時7分、3月4日22時4分-22時14分、3月8日21時58分-23時06分、3月9日19時13分-22時25分、3月10日19時45分-22時2分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB, Hα:7nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、R: 22枚、G: 30枚、B: 22枚、Hα: 23枚の計97枚で総露光時間4時間51分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間 RGB: 0.08秒、Hα: 1秒、それぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

まだHαからの赤が強い気がします。もう少し落としてもいいかも。馬の頭の中を含めて、細かい模様はそこそこ出たと思います。NGC2023は青色は出ましたが、もう少し細部が出てもいい気がします。画像処理の腕がまだまだなのかと思います。恒星の星像はスタックするとかなり真円に近くなりますが、少し同一方向に延びています。これは赤道儀特有の揺れが残ってしまった部分かと思います。

それでもそこそこ撮れたので、まあ満足かと思います。


まとめ

かなり長い期間かかって、やっと画像処理までたどり着けました。最初に撮影した分だけで処理したときは、ゴーストもあれば、色は全然出ないで、どうしようかと思いました。低空での撮影が問題だとわかってやっと目処が立ってきました。

SCA260での撮影は、今の赤道儀ではどうしても振動が取り切れません。同じ日の夜半過ぎからM100とM101を撮影してあり、まだその処理が残っています。今回のような画面全体で見るような星雲とかはまだいいのですが、小さい系外銀河などでは揺れによる星像の悪化がどうしても目立ってしまうことがわかってきました。撮影した銀河の処理を見てからの判断ですが、赤道儀をもっと頑丈なものにしていく必要がありそうです。

あ、今回の馬頭星雲、暗黒帯の中の模様も出てきたので結構満足して妻に見せました。でも中の模様のせいか馬の頭とは全く認識できないみたいで、首のない進撃の巨人にしか見えないとのことです。あーぁ、画像処理は奥が深いです...。



名古屋市科学館から満天NAGOYAへ



名古屋市科学館で2回のプラネタリムを堪能した後、常設展示に後ろ髪を引かれつつも時間も勿体無いので移動します。最寄りえきは矢場町ですが、時間稼ぎで栄まで歩き、そのまま地下鉄東山戦に乗り、名古屋駅の次の亀島駅まで移動しました。

その頃家族はというと、バンクシー展を見てからすでにイオン近くに来ていて、あらかじめ調べてあったラーメン屋に行っているとのことです。私は時間的にはきびしかったので、イオンの中で食べればいいやと、とにかく移動します。

亀島駅からイオンモールに行くのは苦労しました。広すぎてGoogleマップを見てもどちらから回っていけば入り口側に行くかわからなかったのです。結局裏の駐車場入り口側に回ってしまいましたが、店内に入ることはできました。その中からさらにプラネタリウムに行くのに人に聞きながら、3階にあるということがわかり、やっとのことで辿り着きました。

プラネタリウム近くに行くと何故か息子が椅子に座って休憩しています。「プラネタリウム一緒に見るか?」と聞いてみると、開口一番「ラーメン美味しかった!これまで食べた中で一番美味しかった」とのこと。食べることができない私にとってはそんなことはどうでもよく、「プラネタリウム見る?」と再び聞くと、珍しく「うん」とのこと。

一番早いプログラムは高校生が主人公のアニメ。次の回がポケモン、その次が宇宙ステーションから見た映像がメインのものでした。そこまでは待てなかったので、結局一番早い15時からのチケットを2枚取ります。高校生がどう星に絡むのか楽しみです。

開演まで30分くらい時間があったので、急いで昼食を取ります。すると、通りがけのフラダンスショップには妻の姿が。ちょっと前にフラダンスを趣味で始めたので、都会のフラダンスショップに一度来てみたかったとのことです。声をかけたのですが、趣味なので自分と同じで説明が長くなりそうだったので、何とかふっ切ってフードコートに。早く出てきそうなカルビ丼を頼んで、急いでお腹にかきこみます。気づくとすでに入場開始の14時50分、エントランスへ移動です。


いよいよドームの中へ

エントランスで客層を見てみると、友達同士の若い女性がかなり多く、他はカップルのみです。我々のように男複数というのは全くいません。しかもアニメといっても子供向けではないので家族連れの姿も全くなく、すでに浮いているかもしれません。

すぐに案内があり、中に入ります。

中ではすでにプログラム前のデモ映像が流れています。指定された席に座って上を見上げてしばらく見ていましたが、この時点でもう完全に圧倒されました。壁から天井全体に一面に直接配置された高輝度LEDでこれまでのプラネタリウムでは表現できなかった映像を次々と映し出します。オーロラが出たり、メテオストライクみたいな映像がありましたが、感動したのはたまに流れる極々普通の空の風景。例えば雲が流れる星空、普通のプラネタリウムでは絶対にありえない映像です。昼間の青空が綺麗に表現できるのもLEDのコントラストのおかげかと思います。夕方の星が出始める黄昏時の雰囲気も十分に出ています。これはすごい!

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技術的なところを見るために、席を立って壁際のLEDの写真を撮ってみました。LEDのピッチは数mm位でしょうか、間近で見たら一つ一つのLEDが認識できますが、少し離れたところではもう個々のLEDは全くわからなくなります。LEDはおそらく数10cm x 数10cm程度のシート単位になっていて、よく見ると境目がわかりますが、これも将来は解決されていくでしょう。これだけの数のLEDをムラなく表示させるのはかなりの技術なのかと思います。

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男二人組で、しかも壁際に行って写真を撮ったりしているので、ちょっと変な人と思われたかもしれません。プログラムが始まる前に写真を撮ること自体は問題ないみたいで、他のお客さんも空の写真をたくさんとっていました。でもこの極々普通の空の風景、これがどれだけ普通のことではないのか、できるならこの場で見ている人全員に理解して欲しいです。エンターテインメントはこういった最先端の技術を贅沢に消費していくのですが、それでお客さんが入り、星好きな人が増えてくれるとすごく嬉しいです。満天NAGOYAを見た方は、是非とも名古屋市科学館をはじめ全国にあるプラネタリウムにも訪れてくれればいいなあと思います。

さて、実際のプログムラムについてはネタバレになるので詳しくは書きませんが、普通のプラネタリウムレベルの正確な空を何度も映し出してくれます。ここら辺はさすがコニカミノルタです。不思議な感覚だったのは、主人公が見ている方向によって座っている観客の空の方角が一瞬で変わること。南向きの空、西向きの空、あともう一方向と三方向がセットされていました。普通の投影型のプラネタリウムでは方角が変わることは絶対にありません。おそらく今後見ている方向がさらに増えていったり、リアルタイムで方向が変化していくような映像も用意されるのではと思います。一つだけネタバレ、最後の方に出てきた街中の夜明けの空は、まるで本当に外に出ているような、ものすごくリアリティーのある風景でした。

振り返ってみると、やはりものすごいです。これまでもプラネタリウムの印象を完全に覆します。将来的にはこの形式がかなり増えるのではないかと思います。今後はもっと他の状況も再現してくれるのかと期待します。例えば皆既月食、さらには皆既日食も再現できるのではと思えるくらいです。雲越しの月とか、冬の満月の静けさとか、そんな雰囲気まで再現してくれたらと思います。あ、一つどうしても表現できないものを思いつきました。さすがに雨は再現できないと思います。

その一方、星空に関しては普通の投影型プラネタリウムも負けてはいません。満天NAGOYAのようなLEDを壁面に埋めるタイプでは、暗い空と星のコントラストは出ますが、星雲、銀河など、細かい表現は限界があるはずです。今回失敗したのは双眼鏡や星座ビノの類を持っていくのを忘れてしまったことです。最近の高性能プラネタリウム映像を双眼鏡で見ると、例えばアンドロメダ銀河などもきちんと見ることができます。LEDタイプのプラネタリウムで双眼鏡などの倍率を上げた時の映像は果たしてどうなるのでしょうか?ここら辺の追求はまだこれからの課題なのかもしれません。もしかしたらLEDと投影のハイブリッドとかも出てくるのかも。

満天NAGOYAは、LED埋め込み方式を採用した日本で初のプラネタリウムです。そして本日3月24日、横浜にも2つ目の同じ方式のプラネタリウムがオープンしました。名古屋の方でまだ見てない方はもちろん、関東の方もぜひ見に行ってください。天文ファンでこれまでのプラネタリウムに詳しいなら、全く新しいプラネタリウムの表現を思う存分楽しめるかと思います。


その後、SCOPIOと三基光学館へ

さてさてその後ですが、地下鉄東山線をさらに乗って天文ショップSCOPIOに顔を出しました。店長さんと満天NAOGYAの凄さを確認しあいました。

店内に来年中学に上がるという男の子と、その子のお父さんとお母さんがいました。お母さんの方から話しかけてくれて、どんな望遠鏡がいいのか聞かれました。ちょうど店長さんからCelestronのStarSense Exprolorerの説明を受けていたので、これいいですよと勧めておきました。子供が中学入学祝いでどうしても望遠鏡が欲しいので、子供にせかされて遠くから来たとのことです。その子とも少し話して、本当に興味がありそうだったので本を勧めておきました。店の中でも熱心に読んでいたので、結局この日は本だけ買っていましたが、すぐに望遠鏡も買うことになるのかと思います。こういった子を育てていける、リアル店舗がある都市部はちょっと羨ましいです。

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その後、実家への帰り途中に地下鉄を栄で降りてトップカメラを覗きました。特に何も買わなかったですが、科学館から数えて4箇所も天文関連で周り、大満足の一日でした。

次の日は朝早くから妻の実家の神奈川県の相模原に移動です。昼頃には着いて少し時間があったので、相模原市の田名にある三基光学館に立ち寄りました。秋葉原から移転してきたのですが、妻の実家から2キロくらいで無理すれば歩いてもいけるような距離にあったりします。

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でも残念ながらこの日はお休みなようでした。店長さん、ずっと体調を悪くしていたようですが、最近のブログで元気になってきたとの書き込みがあったので、お会いしたかったのですが。

時間が余ったので、子供と一緒に同じく田名にある淡水の水族館「相模川ふれあい科学館 アクアリウムさがみはら」に行きました。ここはタナゴ専用水槽や、タガメやゲンゴロウ、ミズカマキリなどの珍しい水生昆虫もいて、意外なほど楽しめます。

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この日の宿泊は「相模川自然の村清流の里」です。妻の実家の常宿だそうです。安くて食事も豪華で、久しぶりの宿泊での料理を堪能できました。でも運転疲れか体調を崩してしまい、夜も天気が悪かったので、電視観望セットも持っていたのですが結局披露もできず。

次の月曜日には、南大沢に向かいアウトレットモールへ。こんな人が集まるイベントは本当にひさしぶりです。ついでに近くにある学部時代のサークルの部室を覗いたりしました。昼過ぎには高速に乗り、富山に戻ります。

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3連休で富山から名古屋、相模原、富山実家巡りという、久しぶりの家族大旅行でした。私は天文関連で十分楽しめましたが、家族もそれぞれ楽しんだようです。何が一番良かったかと聞いたら「ラーメン!」とのこと。なんだかなぁ...。



3月の連休、名古屋の実家に帰る機会があり、名古屋市科学博物館と昨年末にイオンモールのノリタケ店にできたLEDタイプの全く新しいプラネタリウムに行ってきました。


久しぶりの家族での遠出

3月18日の夜遅く、名古屋の実家へ向かって走ります。家族で実家に行くのも2年ぶりです。次の土曜に朝からフルで遊ぶため、夜中移動です。到着したのは午前1時頃。その日は寝るだけですが、もう母親もいい年なのと、昨年の足の骨折で無理を言えないので、布団などは到着してから自分たちで敷いてそのまますぐに寝ます。

朝は早くから起きて、早速科学館に向けて出発。私以外はプラネタリウムなんか興味がないと、名古屋駅あたりでやってるというバンクシー展へ。午後にイオンで合流することにしました。


名古屋市科学館

前回名古屋市科学館に来たのはもう2年半前になります。



その際は午後遅くに到着したために、プラネタリウムを見ることができませんでした。その鬱憤を晴らすべく今回は2回連続で見ることにしました。

科学館は外観だけで相変わらずインパクトがあります。

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この日は隣で木下大サーカスのテントが出てました。そう言えば昔名古屋で子供を連れてサーカスを見たことを思い出しました。ちょっと見たい気もしましたが、今回は時間が取れそうも無いので、天文に集中です。

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スケジュールを見ると、11時20分のファミリー向けの回と、12時40分の一般向けの回があります。ちょっと迷ったのですが、とりあえず両方見ればいいかと思い、400円追加で2回分の席を取りました。その後、知り合いの学芸員さんに挨拶してきました。研究会などでちょくちょくお会いしている方です。突然の来訪にも関わらず、お忙しいところ丁寧に対応して頂いて恐縮でした。この日のこの方の解説は5回目の公演とかで、残念ながら直接聞くことができなくて残念ですが、とにかくここのプラネタリウムの解説はすごくレベルが高いので他の方の解説も楽しみです。

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プラネタリウム開始時刻まで少し時間があったので、常設展をちょっとだけ見ました。

実は名古屋市科学館は常設展の充実具合が尋常ではなく、冗談抜きで丸一日いても全く飽きることがありません。私が小学生の頃やはり一人で来て、お弁当持参で朝から晩までいました。今は私が通っていた頃に比べて建物が倍増されて常設展エリアは倍増していますので、さらに楽しめるはずです。この間、富山のスーパー宙ガールの小6のMちゃんに会って話した時も、名古屋に来ると「必ず科学館に行き、始まりから終わりまで8時間たっぷり滞在する」と言ってました。まあ、科学好きな子にとっては当たり前のことなのかもしれません。もうこれくらい楽しいところなので、もし余裕があるなら十分な時間をとっていくといいかと思います。

プラネタリウム開始直前に実験のパフォーマンスがありました。時間ギリギリでしたが途中で抜けてもいいというので10分程ですが見ていきました。博士と助手という役で、小さい子にも受けるようにかなり考えられています。空気砲やピンポン球をドライヤーで浮かすとか、短い間に次々とネタを披露していきます。深皿もドライヤーで浮かすことができるのは結構面白かったです。これが浮くと思った人は観客の中でわずか3人だけでした。ここら辺のやりとりは、子供たちどう話せばいいかなど、とても参考になります。


いよいよプラネタリウム

時間になりプラネタリウムへ。まだこの日の初回だからなのか、まだガラガラで指定席と知らずに空いてる席に座ってしまいました。

この回はファミリー向けというので、最初アニメか何かでもやるのかとあまり期待していなかったのですが、全くそんなことはなく全編生解説です。次の日の春分の日の説明があり、前の日の満月の説明と月の満ち欠けの説明があり、冬の大三角とダイアモンドなど、子供がいようがいまいが手抜きの様子がこれっぽっちも見られません。私が一番好きな、街中の星空から光害のない星空へ移る時の、真っ暗になって星がバーっと見えてくる様子もたっぷりと堪能できます。テープ解説や出来合いの映像を流すプラネタリウムとは明らかに一線を画した名古屋市科学館。ファミリーコースという名に惑わされてはいけません。充実のプログラムです。

終わってからプラネタリウム機材を見ながら解説席の方に目を向けると、先ほど挨拶に伺った学芸員の方がいました。実はこの方とは以前観望会について電視観望のことを少し話したことがあり、今回観望会のための機材などを紹介していただきました。


科学館での観望会

まずは口径80cmの三鷹光器製の望遠鏡。この日は一般に公開されていてドーム内に入ってみることができ、昼間のアークトゥルスに向けてありました。残念ながら曇りで、過去映像が出ているのみでした。

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大型の赤道儀に鏡筒が設置されていますが、これはわざと鏡筒側を下に、ウェイト側を上に置き、覗きやすくしたそうです。メートル競争には参加せず、80cmは都会ならこれが最大と根拠を持って決めたそうです。

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80cm望遠鏡に入る手前の屋上の開けた所が夜の観望エリアで、多い時には200人が入るそうです。

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ポイントは退避エリアがあること。雨などの機材の退避や、雷時の人の退避エリアの役割もあるそうです。こういったことは以前からの経験がとても効いているとのことで、2011年のリニューアルになってようやく長年の不満や必要だと思っていたことが実現できたそうです。例えば望遠鏡を出し入れするのに、以前は重い機材を階下から出してくる必要があったのですが、今は待避所の奥の倉庫からすぐ出すことができるそうです。

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倉庫の中を少し見せていただきましたが、その機材の運搬機が秀逸です。EM400にTOA150を載せてあるセットが5台程あったでしょうか。

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これにぴったり合うような専用の運搬機を用意しています。この運搬機、一見特注のようですが、よく見ると市販のキャリー台に一部のみ特注のアダプターをつけて、大型の望遠鏡を簡単に持ち上げて安定に移動し設置できるように設計されています。昔から科学館の企画展示を請け負ってくれていた会社と一緒に考えたとのことで、数百人規模の観望会を定期的に頻繁に、いかにスムーズに実行するために、各所に相当の工夫がされていることがわかります。

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他にも電源を取るためのコンセントが屋外なのに何箇所も設置されているとか、栄、名古屋駅方面の明るい方向を目隠しする壁とか、南側を確保する屋上設計とか、非常によく考えられています。

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屋外コンセントが多数あります。


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街明かりを防ぐ壁と、そこに観望会に役に立つ図が書かれています。

ちなみに以前の観望会の屋上の場所を教えてもらいましたが、エアコン室外機が観望方向にあったなど、反省点が多くあり、そういったことから今の形が出来上がったとのことでした。

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以前の観望会の場所。
ちょうど南側に室外機があって空気はゆらゆらだったそうです。


2回目のプラネタリウム一般コースへ

色々説明していただいている間に、次の一般向けのプラネタリウムの時間が迫ってきました。プラネタリウムドーム内に戻り、機材の説明までしていただきました。

メインの投影機が真ん中の大きな球体ですが、左に見える低い装置が太陽を投影するもの、右に見える小さい装置が天の川を投影するものだそうです。
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このCarl Zeissの機材、600という番号が示す様に600番目のプラネタリウムとのことです。もう見ているだけでその機能美に惚れ惚れします。

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クリックして拡大すると、シリアル番号が見えます。
プラネタリウムを見た際はぜひ自分の目で確認してみてください。

今回お忙しい中、学芸員の方に観望装置、プラネタリウム機材など色々解説していただきましたが、いつか名古屋市科学館で私が持っている技術の電視観望で観望会を実現してみたいです。地元名古屋に貢献できればと思うのと、都市部での観望会がどれくらい大変なのか、一度経験しておきたいという思いがあります。

一般コースのプラネタリウムも十分満足です。この日二度目でも全く飽きることのない、隙のない生解説。未来の空というテーマも面白かったです。単に何万年か先の空を見せるだけではなく、どの星が今の位置からどれくらい動くか、近い星はよく動き遠い星はあまり動かないなど、理由と共に線で結んで表示してくれます。「科学館」の名に相応しく科学的なアプローチで、天文マニアでも十分に満足できる内容でしょう。

一般コースが終わってから、再び学芸員の方と話す機会がありました。その際の会話中で、昨年新しくオープンしたイオンの名古屋ノリタケ店の中にある、コニカミノルタのLEDタイプのプラネタリム「満天NAOGYA」の話になりました。コンテンツの内容を事前に調べていたのですが、正直言うとあまり興味のある内容ではなかったので迷っていたのですが、学芸員の方から絶対見たほうがいいというアドバイスをいただきました。なんでも名古屋市科学館もリニューアルの時にLED壁面設置をやりたかったとのことですが、当時の技術ではLEDの詳細化ができなかったことと、重みで壁が耐えられなかったとのことです。イオンの方はエンターテイメント、科学館は教育ときちんとユーザーの棲み分けができてお互い共存できているとのこと。これは見に行かないわけにはいきません。


常設展の見学から、次の満天NAGOYAへ

その後、少しだけ常設展を見学しました。現在のプラネタリウムの先代の機材が展示されています。解説によると、1962年11月3日から、2010年8月31日まで使われていたそうです。こちらもカッコいいです。

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下の写真は愛知県東栄町の御園にあったプラネタリウムだそうです。私は行ったことがないですが、御園は双望会の開催場所だったことで有名ですね。

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さて時間があまりないので、この時点で移動します。次は満天NAOGYA編です。




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