ほしぞloveログ

天体観測始めました。

先週末に開田高原に遠征した際に撮影したM81です。撮影時の様子は前回の記事に書いてるので、今回は主に画像処理についてです。



WBPPとLRGB合成

今回は撮影した画像はLRGBに加えて、赤ポチをアクセントに加えたいのでHαも撮っています。

撮影中のNINAの画像ですが、5分の1枚どりなのでに以前自宅で3時間分をスタックしたのに迫るくらいの淡いところが出ています。撮影中からこれは期待できそうだという感触でした。
Fm_6VpNacAM0yEK


画像処理はPixInsightのWBPPでLRGBAいっぺんに処理します。

L画像を撮影している際の午前2時半頃に子午線で反転した際に、どうやらカメラが回転してしまったようです。光条線ではほとんど目立ちませんでしたが、強度にストレッチしたら画像周りに三角形でS/Nが悪い部分が見えたので、少し余分にクロップしています。

できたL、R、G、BをそのままPIのLRGBcombinationで一気に合成してしまいます。RGBの色バランスが例えずれていてもSCPPで背景のニュートラルまでふくめて調整できることと、彩度は保たれていることは検証してあるからです。


SPCCの参照銀河

SPCCで参照銀河を平均とM81のSa型で比べてみました。

平均:
Image09_LRGB_crop_ABE1_ABE2_SPCCave

Sa型:
Image09_LRGB_crop_ABE1_ABE2_SPCCsa

やはり少し違いが出ます。Sa型の方がより青く出るようです。銀河によってタイプを変えることで、より近い色になるのかと思います。今回はSa型を採用しました。


NoiseXTerminator

ノイズ処理でよく出てくる不自然なモコモコはあまり好きではないのですが、ツールを色々変えてもどうしてもある程度出てきてしまいます。NoiseXTerminator (NXT)も例外ではないのですが、の値を例えば0.75などの大きくして一度にかけるのではなく、例えば0.25とかして3回かけた方がいいようです。

NXTをかける前:
Image09_ABE_ABE


Denoise:0.75, Detail:0
Image09_ABE_ABE_NXTx075

Denoise:0.25x3, Detail:0
Image09_ABE_ABE_NXTx025x3

0.75一回の時は明らかにノイズ処理によりのっぺりしていますが、0.25が3回の時はあまり大きな構造は見えず、ノッペリ感もなく、適度に細かいノイズは除去されています。

まだ最適な使い方はよくわかりませんが、Denoiseの度合いとかける回数である程度の空間周波数の調整はできそうなことがわかります。


結果

出来上がった画像です。


「M81:ボーデの銀河」
Image09_LRGB_crop_ABE1_ABE2_SPCCsa_BXT_MS_SCNR6


  • 撮影日: 2023年1月21日21時19分-22日5時22分
  • 撮影場所: 長野県開田高原
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L:28枚、R:12枚、G:11枚、B:12枚、Hα:6枚の計69枚で総露光時間5時間45分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L:0.001秒、128枚、RGB:0.01秒、128枚、Hα:20秒、17枚(dark flatは32枚)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

反省点です。
  • 背景のモクモクがやっと出たのはかなり嬉しかったです。昨年5月に自宅で撮影した時はどうやってもカスリもしなかったので、開田高原で撮影した甲斐がありました。その一方、まだかなりノイジーで今回は画像処理で誤魔化しているところがあるのは否めません。L画像だけで10時間とか撮影したくなってきます。
  • 背景に緑色の構造が見えます。これが本当に正しいのか?形はあっているようですが、色がこれでいいのかまだよくわかっていません。ゴースト星雲の時もそうだったのですが、WBPPのLocal Normarizationが悪さをしている可能性があります。もしくはフラットを使い回しているので、合っていないのかもしれません。
  • 恒星が少し不自然です。今回MaskedStretchを使ったのですが、どうも暗くなって迫力にかけます。最近はHistgramTransformでわざとサチらせた方が自然に見える気がしています。まだ恒星処理は下手です。
  • 恒星があまり綺麗でないもう一つの原因が、背景を相当炙り出しているからです。今回スターマスクの類を使わなかったのですが、スターマスクを使ってもう少し丁寧に処理した方が良かったのかと思います。
  • BXTで恒星を小さくできるのですが、小さすぎておかしくならないように多少加減しています。でも後の炙り出しで多少見かけが大きくなることがあるので、リニアの段階ではもう少し小さくしていいのではと思いました。
  • 右上に斜めに走る2本の光が入ってしまっています。RAW画像を見るとL、G画像はほぼ全て、B画像は後半のもので確認できました。RとA画像には入っていませんでした。どうも漏れ光の疑いがあります。原因究明と、フラット取り直しが必要そうです。
  • 昨年春の撮影(結局お蔵入りしたもの)はM82とモザイク合成することを前提にセットで撮っています。自宅と開田高原で背景にこれだけ差があると、おそらく自宅でとってもモザイク合成するのは難しいでしょう。もう一度あの寒いところに行くか?それとも春を待って飛騨コスモスで撮るか?迷うところです。

恒例のAnnotationです。画像処理での回転補正なしですが、縦横もかなり合っていますね。
Image09_LRGB_crop_ABE1_ABE2_SPCCsa_BXT_MS_SCNR5_Annotated


Integrated Flux Nebula

銀河周りにある淡いモヤモヤですが、「Integrated Flux Nebula」と呼ばれていて、略して「IFN」とか、「IF Nebula」とか言うようです。日本語ではなんて言うんでしょうか?調べてみたら「銀河巻雲」という言葉が出てきました。

IFNが認識されたのは結構最近とのことで、文献を見ると2005年が一番古いようで、その著者のSteve Mandelによって名付けられたようです。彼のスライドを見ると例が出ています。一見の価値ありで、アマチュア天文に関しても少し触れられています。

基本的にはIFNは我々の銀河系の外広がっているもので、天の川全体からのエネルーギーによって照らされているということです。

M81、M82まわりのINFが有名みたいで、上記文献でも表紙にM81とM82が出ています。星雲本体を超えて、もっと相当広い範囲にわたって広がっている星雲全体を言うようです。今回はそのうちのM81本体のごく一部が出てきたということです。文献に「我々が思っているより多くの星雲がある」と書いてあり、さらにプロもそれに続けと書いてあるので、もしかしたらアマチュアの結果が先に出てきたのかもしれません。そういった意味では我々アマチュア天文家としても非常に興味深いものになるのかと思います。暗い空が必要ですが、IFNをターゲットとして、短焦点でもっと広い範囲を長時間かけて撮影してみるのも面白いのかもしれません。


まとめ

背景に関しては自宅では絶対出そうにないところまででているので、寒い中撮影した甲斐が十分にありました。やはり暗いところで撮影するのは十分に価値のあることだと思います。

IFNをターゲットに少し挑戦してみたくなりました。焦点距離は400mm以下でしょうか。手持ちで単焦点であまり明るい鏡筒がないので、できればε130とかが欲しくなります。

明るい対象は自宅で、淡いものは遠征でという使い分けを今後していくことになるのかと思います。そのためには遠征前にターゲットを十分に吟味しておくべきです。でも今回なんか、その場でM81に決めたので、これじゃあダメですね。


星友のかんたろうさんに誘われて、2023年1月21日(土)に開田高原まで遠征しました。私は普段あまり遠征はしないので、ここも初めての場所になります。楽しかったですが、とにかく寒かったです。


お誘いが

年末の周参見遠征の後、年が明けてからかんたろうさんから電話が。「21日どうしますか?」と。そういえば確かに観望会すると言っていました。場所を聞くと木曽の方だと言うので「雪が問題なければ参加します。」とお伝えしていました。日にちが近づいてきましたが、どうやら天気は晴れそうです。平日はいそがしいので、当日の土曜の朝に準備です。

せっかくの暗い場所なので撮影を前提とします。この日の装備はSCA260と、眼視用にTSA120、電視観望用に周参見でも披露したFMA135+ACUTERマウントです。あと、星座ビノの見比べをしたいとリクエストがあったので、星座ビノが大量に入っているケースを忘れないように車に積み込みます。寒波が来るかもしれないとのことなので、防寒対策はしっかりしておきます。

あと、手持ちのコンパクトWiFiルーターが壊れてしまったので、そこらへんにあったルーターで設定を終えておきます。StickPCなのでWiFiに固定アドレスで接続できないと、外部モニターを取り付けたりとかで、外では設定が辛いのです。


出発

自宅を出たのは昼の12時位でしょうか。朝食も昼食も食べる暇がなかったので、コンビニの座席で炒飯弁当を食べていきました。この時に念のために3切れ入りのサンドイッチとおにぎり一つ、おやつのシュークリームを買っていきました。実はこれがナイス判断で、高山市を超えて何か買おうと思っていたら、山の中の道50km以上現地までコンビニが一軒もなく、夕食とか買えそうなところがありませんでした。結局このコンビニで買った予備食が夕食と夜食になってしまいました。

途中の道は雪のところも多く、結構怖かったです。特に最後の山越えのところはずっと雪でした。そこまでは結構雲があったのですが、山を越えた途端に青空が晴れ渡っていました。現地には15時半頃に着いたでしょうか。東屋のような屋根付きで座ることができる場所もある駐車場です。周りに電灯とかはないとのことで、しかも全方向低空まで開けていて、かなり理想的な場所です。車で5分くらいの所に、冬でもありがたい暖房付きのトイレもあります。


現地到着

到着した時にはかんたろうさんと、県天のKさんがすでにいました。Kさんは以前自宅にもきて頂いた方で、どうやらかんたろうさんを師匠としているみたいです。二人ともすでに鏡筒を出していました。かんたろうさんは45cmドブを筆頭に、5−6台用意しているそうです。KさんはFSQ85をSX2に載せています。Kさんの赤道儀、以前牛岳でかんたろうさんと一緒に見た時に結構揺れがあったのですが、今回三脚が下からプレートで持ち上げるタイプのものに変わっていて、相当頑丈になっていました。でも三脚の足を結構伸ばしていたのと、ハーフピラーがまだ揺れの原因になると、かんたろうさんに指摘されてました。

私も準備を始めます。SCA260+CGX-L+ASI294MM ProとTSA120+CGEM IIを出した後、星座ビノを8個位用意しておきました。

中1のMちゃん親子も到着。流石に徹夜は厳しいというので、近くに宿を撮ったとのことです。素泊まりチェックインさえしておけばいつ宿に帰ってもよく、24時間入浴可能とのこと。星屋さんにとってはこういう宿はありがたいですね。


トラブルが

ちょっと暗くなってきて、赤道儀の極軸合わせをします。その途中、メンバーが来る途中で車が溝にハマったとの緊急連絡が。みんなで車を持ち上げたら外れるかもということで、何人かで現場に向かいます。私の車もかんたろうさんの車も機材いっぱいで人が乗る余地がないので、Mちゃんのお母様の車で向かいます。

少し迷いながら、結局歩いていけるくらいの近い距離だとわかり、現場に到着。持ち上げようとしましたが、重すぎて無理だと判断し、ちょうど事前に呼んでいたJAFの方がきてくれたのでおまかせすることに。

この撮影場所ですが、国道からおみやげ屋経由で入る経路のはいいのですが、Googleマップに従うと反対側の細い道から案内されるらしく、しかも上り坂で雪のためにスリップしてしまったとのことです。もしこの場所に初めて来られる方は、くれぐれも気をつけてください。国道沿いのおみやげ屋から奥に入るのがコツです。ちなみにスリップした方は同じ富山の方で、普段雪道に慣れている富山勢でも厳しい坂道なので、おかしいと思ったら素直に引き返す方がいいです。

さすがJAFの方、手際よく車を引き上げて、無事に脱出することができました。その際、車で道を塞いでしまっていて、たまたまそこでストップしていた名古屋からきていた方たちと待っている間色々話しました。なんでもカメラで生計を立てている方で、ここら辺にもよく撮影に来るそうです。星が専門というわけではないですが、この日は夜空を撮りにきたとのこと。撮影場所を探していたらしいのですが、結局我々と同じ場所でご一緒することになり、結局朝までいることになってしまったようです。夜も望遠鏡を見ていたのですが、明け方に明るくなってから改めて望遠鏡をじっくり観察されていました。


撮影開始

事故処理の後は現場に戻り、撮影の準備の続きです。今回のターゲットはM81です。実は、去年の春に自宅でM81とM82を別々に撮影しモザイクと思っていたのがあるのですが、画像処理の間にどうにも気に入らなくていつかやろうと思いながらお蔵入りになっていました。その時の画像です。
2022-05-06_M81_SCA260_ASI294MMPro_bin2_10min_home
10分x22枚で合計3時間40分のL画像になりますが、強度に炙り出すと埃のリングが何箇所かに残っているのと、強度に炙り出しても背景の薄いモクモクがどうしてもでなかったものです。ABEとかDBEとか駆使してもせいぜいこれくらいです。

ちなみにこちらが今回撮影したL画像です。
masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-300.00s_FILTER-L_mono
5分x29枚で合計2時間25分のL画像で撮影時間は全然短いのですが、背景のモクモクは遥かに出ているがわかるかと思います。こちらはまだABEとかかける前です。さすが開田高原の暗い空です。

最近思うのは、自宅だとそこそこかなりの淡い所(例えばまゆ星雲とか、ゴースト星雲とか)までは出るのですが、本当に最淡の所はかなり時間をかけてもほとんど出てこないことがわかってきました。例えばゴースト星雲の手の下のヒレとかです。光害地なので、ある意味当たり前かもしれませんが、どこまで出るか挑戦している最中で、だんだん限界が見えてきたような所です。明るい天体は自宅でもいいのですが、本当に暗い天体はやはり遠征でとか、うまく切り分けていくのがいいと思うようになってきました。

開田高原の暗さについてです。iPhoneアプリのDark Sky Meterで測定すると、20.65とか20.91とかでそこまで暗いわけではないようです。実際、東は伊那市の明るさ、南西は名古屋の明るさがわかります。南北と天頂は暗くて、この日は冬の天の川もちょうど南北にはまるようにきれいに見えていました。ここによく来る地元の方によると「最近は明るいことも多く、この日もそこそこ明るい」とのこと。「長期的に明るくなっているのか、季節的なものなのか、たまたまなのかわからないが、今シーズンは明るい。」とのことです。それでもこの日は透明度が良かったのでしょう。ものすごい星の数でした。電話で妻が富山も星が綺麗と言っていたので、かなり広い範囲で透明度が良かったのかもしれません。


寒い、寒い、寒い

この日は寒さも広範囲で厳しかったようで、とにかく開田高原も寒い寒い。温度計は−15℃とかいう声も聞こえていました。実は富山はよっぽど寒くても-4~5℃なので、北陸勢は全員参っていました。かんたろうさんによると、今回は冬で星が見えない富山勢のための観望会で、金沢からはあんとんシュガーさんも来ていました。

私も確かにこれくらい寒いところに行ったことはあります。でもごく短時間で、一晩中この気温で外に出ていたというのは初めてでした。分厚い靴下を履いてカイロを靴の中に入れ、電熱線付きのチョッキを着て、ズボンは3枚で一番外はスキーウェアみたいなやつです。それでも耐えられないくらい寒かったです。

途中Twitterでやりとりしていると、どうも智さんが開田高原に来ていて近くにいるみたいです。せっかくなので電話で話すと、歩いてこれるくらいの距離のところで撮影しているとのこと。撮影も落ち着いているというので、遊びに来てくれました。智さんは撮影はほとんどいつも開田高原ということで、寒さについてもよく知っていました。明け方に向けてまだまだ寒くなるとか。そういえば昔、Zoomで智さんとあんとんシュガーさんと一緒に話したことがあります。今回初顔合わせとなり、お互い挨拶していました。多分これは有名遠征地ならではの光景なんですね。

0時半頃にはMちゃんが寒さと眠気でギブアップ。Mちゃん、この日はポルタを持ってきていて自分で見ていたのですが、そのうち霜が降りてきて、レンズも曇りだし、冬の天体観測の厳しさの洗礼を受けたようです。冬にはヒーターが必要なことを学んだと思います。

夜中を過ぎると自分の機材も霜がひどくなってきました。
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寒さによる今回のトラブルのまとめです。
  • M1 Macbook Proのファンが「フォー」っとすごい音を出して周りだし、しばらくして落ちました。温度間違えて認識している感じでした。
  • その一方、Surface 8Proが寒さに負けず動いていました。それでもバッテリーは満タンのはずなのに15%とか出て、なぜか全然減っていかないというミステリーでした。
  • AnkerのLifePO4バッテリーが最初から低温警告が出て動かず。
  • 鉛バッテリーは夏なら平気で一晩持つはずですが、早々とへたりました。
  • 赤道儀は最初モーターが動かず。
バッテリーは車の中で温めたら復活、モーターは何度か電源入れ直してなんとか動きました。ここまで冷えることがあるとすると、機材も少し考え直す必要がありそうです。でもまあ、機材の前に体の方が参りそうで、やっぱり自宅ぬくぬく作戦の方が楽でいいです。

あまりの寒さで、当初は電視観望を披露したり、明け方近くにZTF彗星を撮影することも考えていましたが、もうすっかり萎えてしまって、途中から車の中に閉じ込もっていました。

かんたろうさんは寒さに全く負けることなく、手袋もせずにドブで皆さんに案内していました。私も色々見せてもらいました。M42はやはりトラペジウム周りが周参見の時と同じように青とか青紫に見えます。トール兜星雲、M51子持ち星雲なども迫力がありました。4時半頃に車で寝ているところをたたき起こされてケンタウルス座アルファを見させられました。「寝てるんじゃない」ということらしいです(笑)。かなり淡くて、なんとか認識はできましたが、かんたろうさんは見えると言っていた暗黒帯どうしてもわかりませんでした。それに比べると、さそり座がもう上がってきていて、M4ははっきりと見えました。

だんだん曇ってきたみたいで、明らかに見える星の数が減っています。もう薄明が始まりそうな午前5時20分、私もここで撮影を止めにしました。あまりに霜がひどいので、片付けるのは明るくなってからにして、今一度仮眠をとります。


朝 

朝、7時20分頃に起きたでしょうか。機材はこんな感じです。
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さて片付けです。できるだけ霜を落として車の中に詰め込みますが、家に帰ったら全部陰干しする必要がありそうです。8時半頃でしょうか、全て機材を車に積み込み、開田高原を後にします。他のメンバーはこの後木曽シュミットの見学に行くそうです。私は昼に用事があるので、この日は退散です。

帰る時に撮影場所から見た御岳山がとてもきれいでした。
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朝は日の出を撮影しにきている人が多くいました。
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私もiPhoneで1枚パシャリ。
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帰り道のガスト

帰り道、スリップなどはなかったですが、これを真っ暗な夜に走るのはちょっと怖いです。

15分頃走ったところで、Mちゃん親子が泊まっている「日の出旅館」を認識しました。ちょっと距離はありますが、次回はここで宿を取るのもいいのかもしれません。

仮眠を取ったので途中眠くはなかったですが、夕食がサンドイッチとおにぎり一個、夜食がシュークリーム一個だけだったので、ドライブ中お腹が空いていました。最初のコンビニで何か買おうと思っていましたが、高山近くになってやっとコンビニが見えたので、あと少し我慢して街中の店を探しました。まだ10時前であまり空いているレストランはなかったのですが、ガストがモーニングをやっていました。

ガストのモーニングかなりいいですね。いつも行くコメダ珈琲と比べてしまいますが、ドリンクバーは飲み放題だし、コメダのパンと茹で卵だけよりももっとしっかりした食事がよく似た値段で食べることができます。この日は和食のモーニングにして、さらに10時半のランチメニューになってからから好しの唐揚げを追加で頼んでしまったので少し割高になってしまいましたが、長居もできそうなのでモーニングだけの勝負ならガストの方がいいかもしれません。


自分にお疲れ様

その後、安全運転で12時半頃に自宅に到着。すぐに機材を陰干しにし、少し用事を済ましてからは昼寝です。やはり寝不足で、ぐっすり眠れました。最近徹夜は辛いです。起きたら夕方で、ほとんど日曜は潰れてしまいました。寒かったのもあるのですが遠征はかなり体力を使います。遠征の時はやはりせっかくの暗い空を生かした撮影を目指すのがいいと改めて思いました。

自宅に着いた時、妻が富山も昨日から寒くて、昼になっても全然部屋が暖まらないとか不満を言っていましたが、長野の寒さに比べたらもう全然で、実は富山は寒くないんだということを思ってしまいました。遠征はできれば冬よりは暖かい季節のほうがよさそうです。

M81の画像処理を終えたら、また記事にします。


BlurXTerminator (BXT) が面白いです。前回までで、ゴースト星雲でのBXTの試用と、BXTをカラー画像に適用した場合などを記事にしてきました。





その後、BXTのバージョンが上がり1.1.1になりました。初期バージョンでは恒星の色ずれがPIのForumで指摘されていたようですが、新バージョンではそれも解決されているとのことです。

BXTの効果がかなりすごいので、過去画像にもいくつか適用してみました。今回の再処理は全て新バージョンで試しています。


三日月星雲

まずは、はくちょう座にあるNGC6888: 三日月星雲で比較です。下の画像は昨年5月にSCA260で撮影し処理したもので、AOO合成になります。当時はそこそこ分解能もでていると満足していました。
Image11_ABE1_PCC_ABE4_cropped2_mod
この時の反省点は、星雲本体はよく出たのですが、背景がかなり淡くて出にくかったのを覚えていて、結構無理をしてノイズ処理をしました。背景の細かい構造はほとんど飛んでしまっています。ここら辺がBXTとNXTが入ったらどうなるかも気にしたいと思います。


BXTとNXTの適用

元のファイルは前回WBPPまで終了して、AOO合成までしたものを使います。まずはSPCCをかけ、すぐにBTXです。この時点ですごい分解能となり、ちょっとびっくりしました。

ストレッチはHistgramTransformationです。ArcsinhStretchとMaskedStretchも試しましたが、星雲本体の赤の部分が差散り気味になってしまったのであきらめました。あとはCurveTransformationのSaturationで彩度を出します。その後NXTでノイズ処理をしています。

これまでマスク処理は、マスクをPIで作ってからPhotoshopにマスクを渡して処理をすることがほとんどでした。今回はマスク処理自身もPIでやってみることにします。今回のマスクはB画像から作り、星雲本体の青いところを強調しました。最後にPhotoshopに一応手渡してほんの少しだけ色を好みのものにしましたが、今回は自分的には98%くらいがPIでPhotoshopで触ったのは本当にごくわずかです。

結果です。一見しただけでBXTを適用したものは三日月本体の分解能が圧倒的に上がっています。

Image11_SPCC_BXT_HT_HT_CT_SCNR_NXT_maskB_CT_CT_CT_ok2

青いところもよりはっきりと出すことができました。背景もそこそこの階調で出ていて、ノイズ処理もより自然になっているように見えます。以前の処理と、今回の処理の違いを一言で言うと、以前のものは画像の中にある情報を引き出し切れていなかったと言うところでしょうか。BXTの底力を見せつけてくれる結果と言えます。

あと、微恒星の数が圧倒的に増えています。私は元々恒星の処理が下手くそなのですが、BXTとNXTのおかげかかなり楽になりました。作業がPIで閉じていて、恒星と背景を分離したり合成したりする必要がなくなってきたことが大きいです。分離は使うとしても軽い星マスク程度です。言い換えると、分離というある意味特異な処理をする必要がなくなりつつあり、より自然に手間をかけずに恒星を出すことができるようになってきています。


驚異的な分解能

こうして見るとBXTの威力がいかに凄いかわかるのですが、いささか分解能が出過ぎのような気もします。そこで、さらに高解像度の画像、例えばこのページにある三日月星雲と比べてみます。試しにPhotoshopで各レイヤーに自分の画像とリンク先の画像をはって、拡大縮小回転などして位置合わせをして、レイヤーの表示/非表示でかなり詳細に比較してみました。

少なくとも私がみた限りでは、BXTのAIによってあからさまに変な線が出ているようなことはないようです。勝手に上記の画像をこのブログに貼るわけにはいかないのですが、結論としては、おかしくないパラメータの範囲でBXTを使う限りは変な構造を加えるようなことはなく、画像の中に情報として残されている構造をかなりのレベルで引き出しているのかと思います。また、引き出す構造に限界もあり、これも詳細画像と比較するとわかりますが、撮影画像の中に無い構造はやはり出てこないこともわかるので、少なくともAIだからと言って、そこまで変なことをしているわけではないのかと思います。

BXT、今回もかなりの手応えなので、今後もう少し過去画像の再処理を続けたいと思います。

前回の記事でBlurXTerminator (BXT)についてゴースト星雲の画像処理で適用した例を書きました。


最初L画像のみでBTXを試していたのですが、途中からL画像単体でBXTを適用することは止めて、最終的にはLRGB合成した後にBXTを適用しました。前回の記事では、RGB画像へのBXTの適用の過程をざっくり省いてしまいました。実際にはかなり検証していて記事もそこそこ書いたけど、長すぎるのでボツにしてしまいました。Twitter上でカラー画像への適用に興味を持たれた方がいたので、ボツ予定だった記事を一部改変して掲載しておきます。


カラー画像にBTXを適用するに至るまで

大きく分けて次の5段階のことを試しました。
  1. L画像のみBXT、 その後LRGB合成
  2. L画像にBXT、RGB合成した画像にBXT、その後LRGB合成
  3. L画像にBXT、星像の大きいRのみにBXTをかけてGB画像はそのままでRGB合成、その後LRGB合成
  4. L画像にBXT、R、G、Bそれぞれの画像にBXTしてRGB合成、その後LRGB合成
  5. RGB合成、その後LRGB合成 、できた画像にBXT
とりあえず最初に各テストの結果を書くと
  1. 一見問題ないが、よく見ると恒星に色ずれが起きる。原因は恒星の大きさがL画像とRGB画像で違いすぎること。
  2. RGBにBXTをかけた段階では問題がないが、LRGB合成をする際に恒星中心がサチることがある。
  3. 恒星にハロが出て、その影響でSPCCをかけると背景の色が変わる。
  4. 問題なし。
  5. 問題なし。
4と5は手法としては問題はなさそうです。ただしこれにNoiseXTerminator (NTX)が絡むと、3と4で差が出ます。あとの方で詳しく書きます。 


1.

最初は
  1. L画像のみBXT、 その後LRGB合成
した場合です。この方法、一見問題なく見えます。この手法で許容してしまってもいいという人も多いかもしれません。ですが、よく見ると恒星に色ずれが起きる可能性があります。

LRGB合成した後に恒星周りに色ズレのような現象が確認できました。たとえば下の画像の恒星は左下をよく見えるとマジェンタが強くなってしまっています。画像処理を進めていくとこれが目立ってくることに気づきました。

Image55_SPCC_LRGB_zure_cut

いろいろ原因を探っていくと、どうやらBlurXTerminatorをかけたL画像と、BlurXTerminatorをかけていないRGB画像の恒星の大きさと差がありすぎているからのようです。BXTでL画像の恒星の大きさは小さくなるのですが、RGBの恒星の大きさは大きいままです。L画像のエッジを効かせるべき範囲と効かせない範囲が、RGB画像では大きく色情報が違ってしまっているのが原因かと思われます。次の2からの作業をしてこの色ズレが消えたので、おそらくは正しいと思いますが、確証はというとまだいまいちありません。


2.

上記の恒星色ずれ問題があったので、次にRGB合成した画像にL画像と同じパラメータでBXTをかけてみました。RGB画像にBXTを適用すると恒星の色がズレる可能性があるという報告も見ましたが、私が試している限りこの時点での恒星の色は保たれているようでした。RGB画像の段階ではいいのですが、このBXTを適用したRGB画像に、BXTを適用したL画像でLRGB合成すると、恒星中心部が激しく色飛びすることがあるようで、あまりよろしくありません。

Image06_RGB_crop_ABE_ABE_ABE_SPCC_BXT_Preview02_saturation

数回多少パラメータなどを変えて試しましたが、多少の変化はあれどいずれも上記画像のような色飛びがでます。再現性もあるようなのですが、一部の原因は撮影時に恒星中心がサチっていたか、サチりかけていたことがあるのかと思います。

RGB合成だと目立たずに、LRGB合成で顕著に出てくるのが少し不思議ですが、とにかくLRGB合成が鬼門です。BTXを使わなければ、同じ画像でもLRGB合成でこんな過激なサチりはでてきません。この時点で思ったのは、どうもBXTとLRGBは相性問題があるような感触です。BXTのdeconvolutionで星を尖らせているようなものだと考えると、LとRGB尖らせたものどうしで合成する際に問題が出るのは理解できる気もします。


3. と4.

次の策として、R、G、Bの元画像それぞれにBlurXTerminatorをかければと思いつきました。その際、恒星が大きく見えるRのみにかけるか、R、G、B全てにかけるか迷ったので検証してみました。

SPCCをかける前は一見RのみにBlurXTerminatorをかけた方が赤ハロが少なく見えていいと思ったのですが、SPCCをかけるとこの判断は逆転しました。結果だけ見せます。

まずはRだけBlurXTerminatorをかけRGB合成し、SPCCをしたものです。SPCC前の結果とは逆に恒星周りにわずかに青ハロが出てしまって、さらに背景が赤によってしまっています。
Image54_Preview01

次にR、G、BにそれぞれBlurXTerminatorをかけRGB合成し、SPCCをしたもの。ハロもなく、背景もまともな色です。
Image55_BXT4RGB_Preview01

ここまではRGB合成のみのテストですが、この後にL画像も同様のパラメータでBlurXTerminatorをかけ、上の2枚のRGBと合成してみました。この時点で1.で示した恒星の色ズレは見事に消えましたが、やはりRだけBlurXTerminatorをかけた場合は青ハロが残り、RGBそれぞれにBlurXTerminatorをかけた場合は色バランスもきちんと残されたままでした。なので、RだけBXTをかけるとかはやめた方が良さそうです。

なんでこんなまどろっこしいことをあえて書いたかというと、BXTはRGBバランスよくかけた方がいいことがわかりますが、その一方でBlurXTerminatorは恒星の各色の大きさ調整に使えるのではないかということです。鏡筒によってはRGBで収差が違う場合もあり、それがハロなどにつながることがあります。それらの色合わせに役立つ可能性があるということです。ただし上で示したように、SPCCなどで構成の色合わせをしてからでないと判断を間違える可能性があるので、きちんと色バランスをとった上で判断した方がいいということに注意です。

上の結果はさらに、恒星の色バランスが悪いと、SPCCが背景の色バランスに影響を与える可能性があるということを示唆しています。PCCもSPCCもそうですが、基本は「恒星の色」を基に「恒星の色」を合わせるだけの機能で、背景の色を直接検証しているわけではないということです。例えば色収差のある鏡筒では恒星のRGBバランスがズレてそれを元にSPCCを使うと背景の色も狂う可能性があるなど、SPCCもまだ完璧とは言い難いことを意識しておいた方がいいのかと思います。

というわけで、ここまでで4の

L画像にBXT、R、G、Bそれぞれの画像にBXTしてRGB合成、その後LRGB合成

という手法でほぼ問題ないことがわかりました。


5

ここまでで、L、R、G、B画像にそれぞれBXTをかけてLRGB合成するのでほぼ問題がないと言ってきました。念の為、LRGB合成してから、その画像にBXTをかけてみます。この段階では4と5にほとんど差が見られませんでしたが、もう少し見やすくするためにNXTをかけてみました。ここで差がはっきりと出ました。

L、R、G、B画像にそれぞれBXT、後にNXT:
Image37_Preview01


LRGB合成してから、その画像にBXT、後にNXT:
Image65_ABE_ABE_ABE_Preview01


後者の方が明らかにノイズが少ないです。(追記: すみません、ブログ記事にアップ後に改めて見たのですが、ブログ上だとほとんど差が分かりません。一応ローカルでは見分けがつくくらいの差はあるのですが...。あまり気にするレベルではないのかもしれません。)

ではなんでこんなことを試したかというと、R画像はまだしも、G画像やB画像にはゴーストの形はほとんど写ってなくて、それらにBXTをかけた結果を見ていてもシャープさが増すというより、単にノイズが増えたように見えてしまったからです。それならばRGBでバランスよくBXTをかけた方が得なのではと思ったのが理由です。


注意と結論(らしきもの)

あと一つ、今のところ私はBXTをリニア画像にしか適用していません。例えばマニュアルにはBXT内でFWHMを評価するとありましたが、ストレッチなどしてしまうとFWHMも正しく評価できなくなってしまうので、リニアで適用するのが原則かなと思います。ただ、例えばFWHMも絶対評価でなく各色の相対評価とかでもいいと思うと、必ずしもリニア画像でなくてもいいのではとも思います。ここら辺はもう少し検証が必要でしょう。

結論としては、いい方から5>4>1>>3>>2の順で、特に3の方法はもしかしたら色々応用できるかもと思っています。

というので、私的には今のところ普通にLRGB合成をして、その画像にBXTをかけるのが一番いいという結論です。もちろん、これはあくまで今回個人的に出した結論というだけで、まだまだ他に試すべきやり方はあるでしょうし、画像や環境によってはこの結論が根本的に変わる可能性もまだあるかと思いあます。


おまけ1: BXTとNXTどちらが先?

最後におまけで、BXTとNXTどちらを先にかけたらいいかの結果を載せておきます。BXTをかける時にもしもう少しノイズが少なかったらとかいう誘惑に取り憑かれたときのためです。5のLRGB合成してから、その画像にNXT、後にBXTをかけています。

Image65_LRGB_crop_ABE_ABE_ABE_SPCC_clone_Preview01

もう全然ダメですね。これは原理を考えればすぐにわかるのですが、ノイズ処理をしてしまった段階で、deconvolutionをする前提が崩れてしまっているからだと思われます。


おまけ2: L、R、G、BそれぞれにBXT、NXTをそれぞれかけてからLRGB合成

もう一つおまけで、Twitterでt a k a h i r oさんからのリクエストです。L、R、G、BそれぞれにBXT、NXTをそれぞれかけてからLRGB合成したらどうなるかです。4.のmodバージョンですね。

結果だけ示します。
Image12_BXT_NXT_LRGB_SPCC_CT_CT_cut


私の予測は4の結果とほとんど変わらないだったのですが、これだけ見ると全然ダメですね。というか、なんでここまでダメなのかむしろ理由がわからなくらいです。何か間違ってないか見直しましたが、NXTの順序を入れ替えただけで、特におかしなところはなかったです。

改めて見てみると、やはりGとBの星雲本体が淡すぎることが問題の気がしてきました。淡すぎるとNXTがノイズを無くしているだけで、特に星雲を炙り出すようなことは全然できてないのです。BTXもNXTもやはり何かはっきりした対象があって、初めて効果的に働くような気がしています。もしくは、今回どのテストも同じパラメータでやって、そのパラメータはというとゴースト本体が一番よく出るようにというので選んでいるので、他のパラメータを考えてみればまた結果は変わってくるのかもしれません。


まとめ

限られた環境ですが、ある程度の結論として「BlurXTerminatorはカラー画像に適用できる」ということは言ってしまってもいいのかと思います。むしろL画像のみに適用する場合はLRGB合成をかなり注意深く実行する必要がありそうです。

いずれにせよ、このBXTはすごいソフトです。もう少し色々触ってみたいと思っています。またまとまったら記事にするかもしれません。


前回記事のゴースト星雲の処理の続きです。




前回はSPCCまでで、モノクロ撮影でBaaderフィルターを選んだらうまく補正ができたという話でした。今回は主にBlurXTerminatorについて試してみて、ゴースト星雲を仕上げています。


BlurXTerminator 

今回はBlurXTerminator (以下BXT)と呼ばれるdeconvolutionソフトを処理してみます。このソフトはRussell Croman氏が独自に書いているもので、氏が書いているいくつかのソフトの最新のものです。特に2021年から機械学習を取り入れたXTerminatorシリーズはノイズ除去のためのNoiseXTerminator (NXT)、スターレス画像を作るStarXTerminator (SXT)といずれも大きな話題となっています。

ノイズ除去ソフトは他にも実用レベルのものがいくつもあるのと、スターレス画像についてはStarNet V2が無料でかなり性能がいいので、私はこれまで氏のソフトは使ってきませんでした。それでも今回のBXTは分解能が信じられないほどに向上するようです。

私自身がdeconvolutionが苦手で、これまでも実際に作例にまで適用したのは数例。大抵は試してもあまり効果がなかったり、リンギングが出たりで、よほどうまくいった場合でないと適用してきませんでした。deconvolutionはどうしても時間を費やしてしまうので、画像処理の中でも大きな鬼門の一つでした。

BXTは、マニュアルとかに書いてあるわけではないようなのですが、基本的にはリニア画像のL画像のみに使うべきだという噂です。とりあえずまずはスタック直後のL画像で検証してみます。パラメータは基本的に2つだけで、
  1. 星像をどこまで小さくするかと、
  2. 分解能をどこまで出すか
だけです。

星像の補正

パラメータは上記の2つだけですが、BXTで「Correct」と呼ばれている、あまり注目されていな星像補正の効果があります。これだけでもかなりすごいので、まずはそこに注目してみたいと思います。

この機能はBXTを走らせるとデフォルトで適用される機能です。ですがこの機能の凄さを確かめるために「Correct Only」オプションをオンにして、この機能だけを試してみます。星像を小さくしたりとか、星雲の分解能を上げるといいった効果を適用「しない」、ある意味BXTのベースとなるような機能です。

マニュアルを読むと以下のものを補正できるそうです。
  • limited amounts of motion blur (guiding errors)
  • astigmatism
  • primary and secondary coma
  • unequal FWHM in color channels
  • slight chromatic aberration
  • asymmetric star halos.
とあります。日本語に意訳すると、
  • ある程度のブレ(ガイドエラー)
  • 非点収差
  • 1、2次のコマ収差
  • 各色のFWHM (星像の大きさ) の違い
  • 多少の色収差
  • 非対称なハロ
となります。どうやらものすごい威力のようです。マニュアルにはさらに「画像位置によってそれぞれローカルなPSFを適用する」ということで、たとえば四隅ごとに星像の流れが違っていてもそれぞれの流れに応じて補正してくれるようです。こんなソフトは私の知る限りこれまでなかったはずで、もし本当ならすごいことです。

試しにスタック後のL画像でオリジナルの画像とCorrect onlyだけで試した結果を比較して、四隅をGIFアニメにしてみました。
masterLight_BIN_2_4144x2822_EXPOSURE_300_00s_FILTER_L

自分的には四隅とも十分真円に見えていたので、全然問題ないと思っていました。でもBXTは躊躇することなくおかしいと認識しているようで、正しく直してくれているようです。左下は星像の大きさが少し小さくなるくらいでままだましですが、左上の画像は少し下方向に、右上の画像は大きく左下方向に、右下の画像は大きく左方向にずれていたことがわかります。本当に正しく直しているかどうかは今の段階では不明ですが、少なくとも見た目は正しい方向に直しくれているようです。効果が分かりにくいという方は、できるだけ画面を拡大して見てみてください。

この結果はすごいです。実際の撮影が完璧にできることはほとんど無理で、何らかの不具合がある方がごくごく普通です。これらのことが画像処理で補正できるなら、安価な機材が高価な機材に迫ることができるかもしれませんし、なにより撮影時のミスなどで無駄にしたと思われる時間を救い出せるかもしれません。はっきり言って、この機能だけでも購入する価値があると思います。

また、BXTはL画像のみに適用した方がいいとも言われていますが、マニュアルによると各色の星像の大きさの違いも補正できるということなので、BXTをカラー画像に適用することも可能かと思われます。


恒星の縮小

上記補正はBXTでデフォルトで適用される機能。さらにすごい機能が続きます。BXTの適用例を見ていると、普通は星雲部の構造を出すのに期待すると思うのですが、私はdeconvolutionの原理といってもいい星像を小さくする効果にとんでもなく驚かされました。まずは背景の効果をオフにして、星像改善のみSharpen Starsが0.25、Adust Star Halosが-0.25として、適用してみます。

Original:
orignal

BXT (恒星の縮小のみ):
staronly

まだ小さくすることもでき不自然になることもほとんどないですが、とりあえず今回はほどほどにしておきます。特に左下の明るい星に注目してもらえるとよくわかるかと思いますが、近づいていていあまり分離できていない2つの星がはっきりと分離されます。パラメータによってはハロの処理が少し不自然に見えたりもしますが、自分で頑張ってやった場合より遥かにましなハロになっているので、全然許容範囲です。

これもすごい効果ですね。星像を小さくするのはいつも相当苦労するのですが、リンギングなどもほとんど出ることがなく、このソフトが決定版の気がしています。ぜひともM57の分解能ベンチマークに使ってみたいです。


背景の分解能出し

やっとBXTの一番の目玉の背景の構造を出す機能です。今回はゴースト星雲のバンザイしている手のところなどを見ながらパラメータを攻めていきました。結局のところ、構造を出すSharpen Nonstellerはかなり大きな値にしないとほとんど効果は見えなかったのでデフォルトの0.9のまま、それよりもPSFをマニュアルで設定することで効果が大きく変わることがわかりました。興味があるところをpreviewで表示して効果を見ながら値を決めればいいと思いますが、今回は最終的にPSF Diameterを0.75、Sharpen Nonstellerを0.90にしました。

結果としては以下のような違いとなりました。

Original:
orignal

BTX(恒星の縮小と背景の分解能出し):
BXT_all

あまり効果があるように見えていませんが、これ以上分解能を出すと、ゴースト君が崩れてきてしまいました。かなり拡大して見ているのですが、ここまで拡大してみることをしないなら、もっと大きな構造を見ながら細部を調整するという手もあるかと思います。


その後の画像処理

でもですね、結局L画像にBXTを適用するのは止めました。じゃあどうしたかというと、スタック後RGB合成した後、そのままL画像とLRGB合成をして、その後にSPCC、CTで色出し、その後にやっとBXTを適用しました。

理由は、L画像のみに適用するよりもLRGB画像に適用する方が、特に細部出しのところでノイズに負けずにゴースト部分が出たというのが大きいです。

カラー画像に適用した場合でも、懸念していた恒星の色ズレもなかったです。今回は色々やって最後この順序になりましたが、この順序が正しいかどうかもまだよく分かっていません。BXTはパラメータこそ少ないですが、他のプロセスとの組み合わせで、順序なども考えたら無限の組み合わせがあり、ものすごく奥の深いソフトなのかと思います。

その際、BXTのついでに、NoiseXTerminator(NXT)も使ってみました。もちろんノイズ除去の効果があったのはいうまでもないのですが、その結果大きく変わったことがありました。PixInsightの使用する割合が多くなり、これまでストレッチ後のほとんどの処理を担っていたPhotoshopの割合が相当減って、処理の大方針が大きく変わったのです。具体的にはdeconvolutionが楽になったこと、そのため恒星の処理が楽になったこと、ノイズ処理もPixInsightでNXTで動くことが大きいです。不確定要素を少なくするという意味でも、PIの処理を増やすのは多分真っ当な方向で、以前から考えていてできる限りの処理をPIのみで済ませたいという思いがやっと実現できつつある気がします。

あともう一つ、PIのWBPPでいつものようにLocal Normarizationをオンにしおいたのですが、どうやらこれが悪さをしていたようでした。RGBでそれぞれの背景の大構造でズレが起きてしまったようで、背景に大きな色むらができてしまいました。ABEのせいかとも思い色々探っていって、やっと最後にLNが原因だと突き止めるに至りました。明るい光害地で、かなり無理して淡いところを出していて、スカイノイズの影響は大きいはずです。もしかしたらそこら辺も関連しているのかもしれません。暗いところに行くか、さらに撮影時間を伸ばす必要がありそうです。ここら辺が今後の課題でしょうか。


仕上げ

今回Photoshopでやったことは、最後の好みの色付けくらいです。恒星も背景もPIできちんと出してからPhotoshopに渡したので、かなり楽でした。

「sh2-136ゴースト星雲」

Image13_ABE_ABE_ABE_cut
  • 撮影日: 2022年10月25日20時2分-26日0時27分、10月26日19時17分-21日0時0分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (初日分は-10℃、2日目は+9℃から11℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L: 54枚、R: 18枚、G: 15枚、B: 12枚の計99枚で総露光時間9時間55分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L: 0.001秒、128枚、RGB: 0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


おまけ

恒例のAnnotatonです。
Image13_ABE_ABE_ABE_cut_Annotated

あと、前以前飛騨コスモス天文台でTSA120で撮影したゴースト星雲と比較してみます。

まずは以前のもの:
TSA120

今回の画像を同じ画角で比べると、
Image13_ABE_ABE_ABE_cut_comp
自宅といえど、さすが大口径で露光時間も長いだけあります。分解能、恒星、ノイズ、いずれも大きく進歩しています。バンザイしているところもきれいに出ていますね。


まとめ

画像処理をサボっている間に、SPCCやBXTとかなり状況が進んでいました。新しいツールも躊躇せずに、どんどん取り込んでいければと思います。BXTも迷走したりしていますが、使い方によって明らかに良くなったりするので、最適な方法を探っていくほかないと思います。


今回はケフェウス座のSh2-136: ゴースト星雲です。撮影したのはもう結構前で、10月終わり頃になります。

前後関係で言うと、自宅でSCA260で撮影したアイリス星雲とセットで撮影したもので、その意味ではもっと早く処理していても良かったものです。


現実的には撮影後に、小海の星フェスや皆既月食など、他にも色々忙しくてなかなか取り掛かることができなかったという理由もあります。最近のBlurXTerminatorが結構凄そうなので、少し試してみたくなり、時間の取れる年末年始に画像処理を進めてみました。


R画像?

撮影は10月25日の夜と、26日の夜の二日に渡っています。アイリス星雲を撮影していたセットアップのままなので、特に何か変更するでもなかったです。

画像処理を進めていくと、なぜかR画像のみ右上に変なスジが残りました。
masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-300.00s_FILTER-R_mono

最初は単にアンプグローの残りかと思ったのですが、そうだとすると2つ奇妙なことがあります。一つはGとBにこんなスジは全く出ていないこと、もう一つはダークフレームで見たアンプグローとスジの方向がずれていることです。R画像のスジは全部下向きですが、ダークフレームの筋は放射状に広がっていて、上剥き成分もあります。重ねて比べてみると、上向き成分のあるエリアでもR画像では下向き成分になってしまっているので、アンプグロー起因でない可能性が高い気がします。多数スタックで画角がずれてスジもずれたことも考えましたが、明らかに画角ずれ以上にスジがずれています。

こうなるとRフィルターが何か悪さをしているのかと思ったのですが、この前に撮影しているアイリス星雲のR画像にも、この後の同じ日に撮影している燃える木のR画像にも、そんなへんなスジは見当たりません。そうすると本当に存在するスジかとも思ってしまいますが、他の方の、かなり炙り出してある画像を見てもそれらしいものは見当たりません。釈然としませんが、今回は画像処理で誤魔化すことにしました。


USBケーブル

もう一つトラブルを思い出しました。ゴースト星雲と燃える木の撮影ターゲット切り替えの時に一つやらかしたことです。USBケーブルが引っかかってしまいました。

6B15B0B8-118F-499E-89DD-2B5595D700F1
子午線反転のところは必ずその場にいるようにしているのですが、ターゲット切り替えは部屋の中からリモートでやっています。中途半端に垂れ下がっているケーブルが赤道儀の出っ張りに引っかかったようです。ターゲット移動のときにカメラの映像を見ていたのですが、突然変な感じで映像が止まり、接続が切れたみたいだったのでもしやと思って外に出たら、案の定でした。幸いケーブルの方が破損しただけで、肝心なカメラの端子は無事で、USBケーブルを交換して接続し直したらきちんと認識され、撮影も可能でした。ケーブルの方を弱く作ってくれているのかと思いますが、こういったところはありがたいです。

反省点としては、
  • ケーブルの設置はきちんと弛まずに、かつ回転を妨げないようにすること
  • ターゲット移動の時もきちんと現場にいること
などしょうか。


SPCCの意義

新たにPixInsightで実装されたSPCC(SpectrophotometricColorCalibration )は、かなりすごいですね!懸案だったフィルター補正の機能をうまく実装したと思います。かなり原理的に正しい色に近づく可能性が高くなったと思います。

「PCCは科学的に正しいことをしているので、出来上がった色はおかしいはずがない」とかいう意見もちらほら聞きましたが、実際には全然そんなことはなかったということです。以前からPCCでは基準となるカメラと、個人が撮影するカメラの波長に対する応答が違うので、その分の色ズレが原理的に起きてしまうという主張をしていましたが、その機能が見事に実装されています。


個々のカメラの応答をデータとして持ち、参照カメラとの差を補正しない限り、正しい色にならないということです。今回のSPCCでは、実際に個々のフィルターやセンサー特性をデータベース化して持とうとしているため、原理的にも正しい方向に大きく進んだわけです。

さて、どれくらいの機能が実装されたのか、SPCCを使って実際に色合わせをしてみました。SPCCのインストール方法や、巨大なガイアのデータを落として使えるようになるまでは、マニュアルを見ればすぐにわかりますし、日本語の解説ページもいくつかありますのでそちらに任せるとして、使ってみてのポイントだけ少し書いておきたいと思います。

まず、プレートソルブがScriptのImageAnalysisにImageSolverに集約されたことです。これまではPCCは専用のプレートソルブ機能を持っていたのでですが、SPCCはもちろん、PCCもあらかじめ別途ImageSolverを走らせておかなければ、使うことができないようになってしまっています。このことを知らなければ、これまでのユーザはとまどうかもしれませんが、これは正常進化の一環で、一度わかってしまえばこれ以降特に問題にはなることはないはずです。

一番戸惑うところは、フィルターの選択でしょう。デフォルトはソニーセンサーのUV/IRカットフィルターになっています。今回の撮影ではASI294MM Proを使っているので、最初はここら辺から選ぶのだろう考えました。UV/IRフィルターは使っていないので、フィルターなしのソニーセンサーのRGBで試しました。フィッティンググラフは以下のようになります。
SPCC_Sony_RGB
ですが、これを見ると、明らかにフィッティング直線にかなりの星が載っていないことがわかります。

フィルターの選択肢をよく見ているとBaaderというのがありました。よく考えたら今回使っているカメラはモノクロで、応答の違いは主にRGBフィルターで起きていると思うと、使っているフィルターに応じて選ぶ方が良さそうです。実際に今回使ったはBaaderのRGBフィルターだったので、RGBそれぞれにBaaderを選んでみることにしました。すると以下のように、ほぼ全ての恒星がフィッティング直線に載るようになり、少なくともこちらのBaaderを選んだ方が正しそうなことがわかります。
SPCC_Baader
でもこれ、よく考えるとモノクロセンサーの特性は考慮していないんですよね。量子効率はソニーセンサーの選択肢がないので、理想的な場合を選びました。この場合量子効率は全波長で100%とのことなので、やはりセンサーの応答は実際には考慮されていません。

一眼レフカメラは、ある程度専用フィルターファイルが用意されているようです。でもCMOSカメラに関しては、一部のソニーセンサーの型番は専用フィルターを用意されているようですが、基本的には代表的な設定で代用しているので、まだまだ今後発展していくものと思われます。もしくはフィルターファイルは自分で用意できるようなので、実際に使っている環境に応じて自分でフィルターを書くことがいまの段階では正しい使い方と言えるでしょう。

重要なことは、考え方自体は真っ当な方向に進んでいて素晴らしいのですが、まだSPCCは今の段階では色合わせについては完璧はないということです。今後少なくともフィルターファイルが充実して、例えば複数選択できるなど、柔軟に対応することなどは必須でしょう。その上で多くのユーザーレベルで実際の色合わせの検証が進むことが重要かと思います。今後の発展にものすごく期待しています。

さて、PCCとも比較してみましょう。PCCでのフィッティングのグラフを示します。
PCC
SPCCに比べて一見ばらけていて誤差が多いように見えますが、縦軸、横軸のスケールに注意です。SPCCはかなり広い範囲をみているので、直線に載っているように見えるだけで、スケールを合わせるとばらつき具合はほとんど変わりません。実際に色合わせした画像を比べても、少なくとも私の目では大きな違いは見えません。

SPCC:
Image05_crop_ABE_ABE_SPCC_HT

PCC:
Image05_crop_ABE_ABE_PCC_HT

PCCは各恒星の点が2つのグループに分かれたりとフィッティング直線に乗らないケースもよくあります。そんな時はどうしようもなかったのですが、SPCCではそれらを解決する手段が手に入ることになります。SPCCは手持ちセンサーのデータを持つことで、色を正しい方向へ持っていこうとしています。科学的に正しい方向に進むのはいい方向で、少なくともそういった方向が選択肢として選べることは素晴らしいことだと考えています。

SPCCだけでもうかなり長くなってしまいました。続きもまだまだ長くなりそうなので、今回の記事はここまでにします。次は主にBlurXTerminatorについてですが、こちらもなかなか面白いです。

2022年12月29日、かねてからかんたろうさんに誘われていた周参見(すさみ)に遠征に行ってきました。周参見は和歌山県のほぼ南端。富山からはかなり遠かったです。


富山を主発

前日の28日は休みを取ったので、午後から準備をします。きはらっちさんからSCA260見たいとリクエストがあり、頑張って積み込みました。というのも、予定していた荷物をたくさん積めるノアが急遽故障、仕方ないのでラクティスにします。SCA260にはCGX-Lもセットなので、後ろの座席も助手席もイッパイイッパイです。夜のうちに準備した荷物を朝車に積み込み、何とか出発できる状態に。

富山を朝9時に出て、実家の名古屋で少し用事を済まし、14時に名古屋を出発。どの経路で行くか迷いましたが、津市のアイベルに寄りたかったので、紀伊半島を東から回ることに。実家は名古屋の北区で、津までいくなら名二環から入るといいと教えてもらいました。途中工事で蟹江インター付近が少し渋滞していましたが、それ以外は順調でした。怖かったのは、カーナビが古くて新しい道ができているので、何箇所かJCTでどちらに行けばいいか迷い、しかも最近関西方面の地名に疎いので、ギリギリで判断するということがありました。あらかじめ調べておかないとダメですね。


久しぶりのアイベル

アイベルに着いたのは16時過ぎくらいだったでしょうか、11月に自宅に来てくれたEさんが、三重に引っ越すというのでアイベルに顔を出し、わざわざ私のためにVixenのカレンダーを頂いてきてくれました。そのお礼と、アイベルにはコロナ以前に数回行っただけなので、久しぶりに覗いてみたかったのです。




そういえば前回アイベルに行ったのも今回の初回集まりで、今見たら2017年ですね。もう5年ぶりになります。

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アイベルでは残念ながら何も買うものがなかったんのですが、店員さんと少しだけお話しさせていただきました。ε130が展示されていたので一応「売り物じゃないですよね?」と聞いてみたのですが、やはり展示用に借りているものだそうです。いま発注しても1年半待ちとのことなので、現物があれば欲しいと思っていたのですが、シリアル番号を見たら確かに「DEMO」と刻印が打たれていました。そういえば最近は細かいものも揃ってしまっているので、星まつりでもそうなのですがあまり買い物していません。店舗にいってもその場で欲しいと思うものに出会うことも減ってきてしまいました。ちょっと寂しいです。

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「これから周参見に行くんです」と話すと、「3時間はたっぷりかかる」とのこと。「何も購入できなくてすみません」と挨拶して、アイベルを17時前くらいに出発しました。


いざ周参見へ

そこからの道は迷うことはありませんでしたが、高速道路が尾鷲を通り越して熊野で終わりでした。これも全然調べてなかったのが悪いのですが、下道でまだ100km以上もあります。ここでかんたろうさんに電話をかけて「まだ2時間くらいかかりそうです」と話して、のんびり海岸沿いの道を進みます。熊野ってあの熊野古道の入口なんですね。途中熊野古道の看板があり実感したのですが、よく考えたら和歌山ってあまり来たことがなく、多分子供の頃に家族で行った紀伊長島が私にとって最南かと思います。今回は先っぽまで行くのですが、真っ暗な中での行き帰りなので一度時間をとって明るい時にじっくりこの辺りを回りたいと思いました。

熊野からは下道だけかと思ったのですが、途中新宮から10kmくらい、周参見の直前も10kmくらい、無料の高速道路?があって少し距離を稼げました。でもあとは普通の下道で、しかも海岸沿いの道なのでカーブも多くスピードも出せないので、安全運転で進みます。

結局周参見についたのは21時くらいだったでしょうか。途中コンビニで弁当を買って食べてたりもしましたが、アイベルから4時間はかかったことになります。

到着して皆さんと挨拶を交わす間もなく、すぐに天リフさんの生中継のインタビューを受けます。



動画開始から38分頃から出てきます。ライブビューでもそうですが現場でも、富山から遠く周参見まで来たことに驚かれたようです。現地ではヒロノさんの66cmを筆頭にドブが何本も並び、眼視が相当に盛り上がっていました。フラッシュなどたけなかったので写真はありませんが、天リフさんの動画でその雰囲気はわかるかと思います。

到着した頃はまだ月が出ていたのですが、月の反対側はすでにかなり星が見ていて、基本的に暗いのと透明度がいいのが実感できました。月が沈んでからは全方向かなり暗くなり、かなりいい環境で、皆さんが集まる場所だというのが理解できました。実際、今回声をかけたメンバーだけでなく、関西の常連さんが数多くいらしていました。聞くところによると、冬場は関西からだと比較的暖かい周参見がほぼ一択とのことです。スタッドレスタイヤをつけている車が少ないので、路面が凍結しないということが重要だということでした。実際、空は全方向かなり低空まで開けているし、カノープスが普通に見えたのにはちょっと驚きました。

私はとりあえずSCA260を出したのですが、結局風が強いのと、ミニワイヤレスルータの電源のUSB-Bケーブルが破損しかけていてうまくLANでStick PCに繋げなかったので、撮影は諦めてしまいました。一応、リクエストしてくれてきはらっちさんには見せることができたので、まあよしとしましょう。他の方も撮影した画像はかなりの率が風でブレてしまっていたそうです。


ACUTER自動導入経緯台のテスト

その一方で今回はもう一つ、新兵器のお披露目がありますです。小海でサイトロンさんからお借りした、まだ日本では未発売のACUTER社の自動導入、自動追尾の経緯台です。AZ-GTiと同じようにSynScanやSynScan Proで操作できるものですが、AZ-GTiよりもかなり小さくて軽いです。しかも単3電池3本で稼働するので、電源も気軽です。

元々のセットアップは三脚付きです。
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接続は3/8インチネジなので、普通のカメラ三脚なら大丈夫でしょう。なのでFMA135と合わせてこうしました。
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ちょっと暗くて見にくいですが、三脚もミニ三脚にして地面に直置きです。長年追い求めていた超コンパクト電視観望セットです。小さすぎてそこにあるのに気づかずに蹴飛ばされるのが心配なくらいです。実際、自分で一度蹴飛ばしてずらしてしまいました。見にきてくれた人もこの小ささと、実際に出てくる電視観望の画面のギャップにかなり驚いていたようです。

これまでの最小セットアップとして、FMA135と自由雲台を使ったセットは試したことがありますが、やはりお客さんがいる観望会だと導入に戸惑ってしまうので、できれば自動導入があったほうがいいです。

これくらいコンパクトだと、カバンの中に潜めておいて、特に観望会とか計画するでもなく機会があったときにパッと取り出し、その場で星雲とかを見せるができます!少し心配なのは、こういったマニアの所業が一般の人に果たして理解されるのか?白い目で見られないように気をつけながら、一度くらいはやってみたいと思っています。


ACUTERでの電視観望操作の実際

さて、実際の動作の具合です。スマホやタブレットのWiFiで繋ぐ必要がありますが、今回はiPhoneXで試しました。SSIDに「ACUTER」と表示されるので、すぐにわかるでしょう。設置はAZ-GTiと同じで、鏡筒を水平北向きに置きます。最初左中を間違えて、初期導入で鏡筒が下の方を向き始めてしまいました。どうやら北を向いた時に後ろから見て、鏡筒が左にACUTERを右に設置するのが正しいようです。ACUTER本体に水準器がついているのですが、今回の三脚は各脚の高さの微調整が難しく、水平方向がうまく出ないので、そこそこ合わせるくらいで試しました。鏡筒の水平方向も重要です。これまではFMA135にアルカスイス互換のぷれーとをつけて、Vixenアリガタとアルカスイス互換クランプへの変換アダプターを自分で組み合わせたものを使っていましたが、これさえも大きく感じてVixenアリガタの小さいものをFMA135に取り付けました。アルカスイス互換クランプには水準器が付いていたので鏡筒の水平も取れていたのですが、今回は水準器がないので鏡筒の水平も見た目でだいたいです。

とりあえずM42オリオン大星雲を見ようと思い、初期アラインメントはワンスターアラインメントにして、リゲルを導入しました。FMA135の焦点距離が短いのと、Uranus-Cのセンサー面積も1/1.2とそこそこ大きいので、ある程度の水平出しでもすぐに初期アラインメントのターゲットが入ってきます。その後、M42を入れてみますが、AZ-GTiのようにごくごく普通に導入が成功します。

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この時点で再び天リフさんがきてくれました。どうやら有線中継のようで、その場に中継機材を持って来れないようで、写真に写してからそれを中継してくれました。上にリンクを貼ってある天リフさんの動画の2時間15分くらいの頃から出てきます。

ACUTERについては、途中でモーターの特に水平方向の動きが止まらなくなるということが数回ありました。方向ボタンも効かなくなってしまいます。それでも接続は継続していて、一旦切ろうとしてSynScanを落としても動きは止まらず、その状態でSynScanで再接続はできるのに動きは止まりません、一旦こうなると、本体の電源を一旦切っても再び電源をつけるとまた動き出してしまいます。電源を切って電池を抜いてしばらく待って、電池を再び入れて電源を入れるとやっと止まりました。電源を切るだけでしばらく待つというのは、その場では思い付かずに試せませんでした。少なくともそれらしい動きが2回は確認できたので、何らかの不具合が存在するようですが、どこをどうしたら発動するかはまだ良くわかっていません。もしかしたら寒かったのと充電タイプの電池で試したので、電圧降下が不具合の原因はあります。これは今後もう少し使い込んで検証したいと思います。

トラブルがない時は普通に操作でき、その後何人かの方に電視観望を見てもらいました。他に電視観望をやられている方はいないようだったのですが、そもそもこういった有名遠征場所に行ったことがほとんどないので、どう振る舞えばいいのかあまりよくわかっていなくて、眼視が主なのであまり邪魔にならないように少し離れた場所に設置して、画面もあまり明るくならないように注意します。普段の撮影はほとんど一人が多く、観望会でも仲間内の場合が多いので、他の方に迷惑をかけていなければよかったのですが。

他には馬頭星雲と燃える木、あとプレアデス星団(スバル)を見てみました。さすがの周参見です。かなり環境が良く、馬頭星雲はものすごいコントラストです。

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スバルに至っては青い分子雲が余裕で見えています。

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電視観望でここまでM45の分子雲が出たのは初めてです。


眼視でM42に色が!

電視観望はせいぜいこれくらいで、滞在時間の多くはドブの方を見せてもらっていました。かんたろうさんには45cmでスバルとかトール兜とか見せてもらいました。特にトール兜は2本のつのまではっきり見えたのでビックリでした。OIIIをフィルターを入れてあるそうですが、フィルターなしの場合も見せてもらいました。フィルターなしでもかろうじて見えるのは面白かったです。周参見の空の暗さと45cmの威力でしょうか。

ヒロノさんの66cmでM42を見せてもらいましたが、今回初めてオリオン大星雲ではっきり色がついていることがわかりました。特にトラペジウムの辺りは私には青紫に見えました。これは気のせいでも、神の目も何でもなく、はっきり意識できた色でした。その一方、ウィングの部分は少しピンクに、M43のあたりは黄色がかって見えているようでしたが、これらはトラペジウム周りほどははっきり色がわかったわけではなく、気のせいの可能性もあります。少なくともトラペジウム周りと、M43あたりの色が確実に違うということはよくわかりました。さらに25cm、8cmでも同じM42を見せてもらいましたが、少し青い色は認識できましたが、改めて66cmを見せてもらうとやはり口径の効果でしょう、明らかに色づきは66cmが圧倒的でした。

その後かんたろうさんに再びスバルを見せてもらい、メローぺ周りに分子雲が見え、少し青紫の色が付いている気がしました。トラペジウム周りの色と似ていると思いましたが、やはりトラペジウムほど濃い色ではなく、やはりこちらも気のせいの可能性もあります。

いずれも他人様のドブソニアンでのけいけんになりますが、飛騨コスモスでのM57に次いで、今回とうとうM42も色がついて見えました。輝度の高い星雲はやはり色がつくようです。色が付くといっても暗い中での色なので、濃いかもしれませんが、鮮やかに見えるようなことはありません。それでも星雲の色が目で見て見えるというがわかるのは素晴らしい経験です。今回のM42のヒロノさん、夏のM57のかんたろうさん、どうもありがとうございました。

観望の途中、少し天リフ編集長と話しました。話題は天リフが採算ベースに乗るかとか、最近の仕事がどうかとか、アマチュア天文業界の発展とかです。中国の天文メーカーの台頭も大きですし、日本の天文メーカーが元気がなさそうな心配もあります。でも天文人口が増えて欲しいというのでは一致した意見でした。他にも動画編集の大変さや、ブログを続けることの悩みなど、情報を発信することの苦労とかも話せました。こういったことが話せるのはオンラインよりは、やはり面と向かってですね。

さて、集まったみんなで記念写真をとったり、いろんなところに顔を出したりで、午前1時頃になりました。その時点で風も強くて撮影はあきらめたので、撮影機材の方は片付け始めました。


眠かった

結局午前2時頃にはその場を出ました。参加メンバーの津村師には彗星は明け方間近がいいとアドバイスを受けましたが、残念ながらその時点で退散することにしました。その日に高校の同窓会があり、昼前にはちょっと体裁を整えて名古屋駅に行かなくてはならなかったからです。周参見から名古屋まで仮眠をとりながらだと思ったよりかかりそうです。

結局名古屋の実家に着いたのは午前9時過ぎ、シャワーを浴びて準備をしたらもう出発する時間でした。普通は星見から帰って朝から寝るのですが、この日はわずかな仮眠でほとんど寝ることもできず、同窓会の2次会が終わった頃にはもうヘロヘロでした。実家についてすぐ寝てしまい、結局14時間寝てやっと元気になりました。もういい歳なので、あまり無理はせずに星を続けるべきかと改めて思いました。

遠かったけど、とても楽しい観望会でした。誘ってくれたかんたろうさん、どうもありがとうございました。現地でお会い出たみなさんも、いろいろお世話になりました。どうもありがとうございました。年末で名古屋の実家に行くので参加できた周参見かと思います。来年も時間が許したらまた参加したいとおもいます。

 

一連の皆既月食記事の8本目。いい加減にそろそろ終わりにするつもりです。前回の記事はこちらから。



Hough変換

今回はHough変換を使ったサークル抽出で、月食中の月の位置合わせに挑戦です。FS-60CBで撮影した4時間分の広角の画像から月が画面中心に来るように位置変換をします。その後、タイムラプス映像にしてみます。

Hough変換は画像の中から特徴的な形を抽出するアルゴリズムで、その中に円を抽出する関数があります。Hough変換は色々な環境で使えますが、今回はOpenCVで用意されている関数をPythonで使うことにしました。検索するとサンプルプログラムなどたくさん出てくるのと、今回は対処療法で組んでいったのの積み重ねなので、あまりに汚いコードで人様に見せれるようなものではないです。なので、どうパラメータを取ったかだけの説明にとどめることにします。

基本的にはあるフォルダにある、月が映っているたくさんのファイルを順次読み込み、カラー画像をグレースケールに変換して、HoughCircles関数を呼び出すだけです。Hough関数は以下のようにしました。

HoughCircles(gray, cv2.HOUGH_GRADIENT, dp=1, minDist=1500, param1=30, param2=2, minRadius=350, maxRadius=400)

パラメータがいくつかありますが、少しだけコツを書いておきます。
  • HOUGH_GRADIENTとHOUGH_GRADIENT_ALTは両方試しましたが、ALT付きの方が誤検出が多かったのでALT無しの方にしました。
  • dpは1以下も試しましたが、位置精度に違いはあまりなかったです。大きな値にすると精度が悪くなりました。
  • 円を複数検出するわけではないので、minDistは1000とかの相当大きな値にしておきます。
  • param1は最終的に50程度にしました。大きすぎたり小さすぎたり値では検出できなかったりしますが、位置精度にはあまり影響ないようです。
  • param2は位置精度に影響があるようです。大きすぎると精度が悪くなりますが、5以下くらいだと精度はこれ以上変わらないようです。
  • minRadiusとmaxRadiusは、月の大きさは一定なのでその半径を挟むような値を取ると効率が良いでしょう。

とりあえず結果を示します。


結局出た精度はこれくらいです。もうちょっとビシーっと止まってくれればいいのですが、まだちょこちょこズレています。

実は精度を出そうとして色々試してみてます。Hough変換のパラメータをいじるのはもちろんなのですが、大きなものは
  • グレー化後に、あらためて画像の2値化
  • グレー化後に、あらためて輝度やコントラストをいじる
  • Adobe Premiereのブレ補正
  • 一旦Hough変換でラフに位置合わせして、少し大きめに切り抜いて、再度Hough変換
くらいでしょうか。でも結局どの方法も精度を劇的に上げることはできませんでした。Hough変換で目で見てもおかしいズレがあるので、そこだけでもずれが直ったらと思ったのですが、やはりダメなものはダメで、どうも苦手な画像があるようです。

今回はFS-60CBで広角で撮ったものから抜き出しているので、解像度が良くないこと。さらに動画の中から最初の1枚だけを抜き出しているので、大気揺らぎなどで多少のブレがあります。もしかしたらスタックをすると平均化されるので、細かいブレは少なくなるのかもしれません。スタックしてから、Hough変換ではなく、特徴点を抜き出して合わせるとかいう処理をした方が精度が出るかも知れませんが、ちょっと力尽きたので、今回はここまでにします。

ついでに同じ位置合わせの手法で、いくつか画像を抜き出して天王星の潜入画像をつくってみました。位置合わせ後、比較明合成しただけです。これくらいの精度ではそこそこ合って見えるんですけど、やはり長時間のタイムラプスだときついかもです。

uraus_in

まとめ

今回の皆既月食に関する記事はこれで一旦終わりにします。

撮影後、1ヶ月以上にわたって楽しむことができてかなり満足しました。その一方、そろそろ月も飽きてきました。ただ、まだ未処理ファイルが大量にあるので、気が向いたらもう少し追加で書くかもしれません。

先の記事でも書きましたが、今回は月食に関してはかなり満足して撮影できました。大きな課題は地球本影を位置補正することなく撮影することですが、次回月食ではこれ一本に絞ることにするかもしれません。

ここ数日、BlurXTerminatorがすごいことになっています。次は少しこちらの方に時間を費やそうかと思います。












まだまだ自分の中では皆既月食マイブーム状態です。今回は地球の影が止まるような位置をどう計算するかの一連の記事の、少し脱線するような記事になります。


「ほんのり光芒」さんとのコラボ? 

前回の記事でコメントをいただいた「ほんのり光芒」のみゃおさんがブログ記事の方で、地球本影の固定に関してかなり細かい検討をされています。


上記ページからリンクを辿れますが、かなり以前から考えられていたようで、私のようなにわか月食撮影とは歴史が全然違います。天リフさんのピックアップにも取り上げられていて、ほしぞloveログとのちょっとしたコラボのような様相を呈しています。




視野ズレの計算プログラム

前回までで、地球の自転による観測者の位置変化で視野に大きなずれができて、地球の影の形がひしゃげることを、多少定量的に見積もってみました。


大まかな見積もりと、実際にどれくらいずれるかは、少なくともオーダーレベルでは一致しているようなので、今回はもう少し精度良く計算できないかを考えてみます。といっても、自分だけで考えるのはそろそろ限界で、Webで少し検索してみました。すると老猫こてつさんという方が各種軌道計算などされて、その中で求めていた月の視野位置のずれそのものをpythonで計算してくれていることがわかりました。


プログラムのソースを公開してくれているので、そのまま計算することができ、とても助かります。ただし、それら計算式をどう求めているのかの記述はないので、そのプログラムの出典を調べるためにブログの過去記事を読んでいくと、どうやら中野主一さんの昔のBASICのコードをpythonに置き換えてくれているようです。


参考書籍

中野主一さんといえば、最近では小説「星になりたかった君と」で「長野秀一」という名前で出てきた重要な役割を担う老人のモデルとなった方。おそらく昔の天文少年にとっては憧れのアマチュア天文家で、多くの天文雑誌で連載をもち、アマチュアながら元国立天文台長の古在由秀先生から計算を依頼されるなど、軌道計算の大家です。私はその当時マイコン少年でしたが、大人になって天文を始めてから、昔使っていたマイコンで実用的な天体計算をしていたことを知って、とても感動したことを覚えています。実は中野主一さん、星を初めて少しした2018年に一度お会いして、お話しさせていただいたことがあります。私はかなり緊張していたのですが、気さくにお話ししていただきました。講演も聞かせてもらったのですが、当時どう計算を進めていたか、プロから依頼された当時の様子などのお話で、ユーモアたっぷりの講演で今でも心に残っています。

そんなわけで早速、サイトに載っていた参考文献を注文しました。長沢先生の「天体の位置計算」は以前から持っていたもので、まだ普通に販売されているようですが、他の3冊は流石に古本でかろうじて見つかるくらいでした。
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その中で一番古い「マイコン宇宙講座」は昭和55年の初出のもので、月の計算そのものの章があり、式の解説もあったので理解しやすかったです。

「マイコンが解く天体の謎」は昭和57年出版で、使われている言語はなんとF-BASICですよ。内容はプラネタリウムのようなものを実現することが中心ですが、実は私、中1の時にFM-NEW7を中古で買って、しゃぶり尽くした口です。その数年前に出た本のようなので、恐らくFM-7が出た時で、実際にはFM-8で組まれた時代のプログラムですね。

一番新しい「天体の軌道計算」は1992年なので、前の2さつからはかなり経っていて、プログラムも複雑になり、さらに精度を求めているような内容になっています。

とりあえずは、月の視野ズレの計算方法が載っている「マイコン宇宙講座」をもとに、老猫こてつさんのpythonコードを使わせていただいて計算を進めようと思います。

ただしこれはまだ、「月」の視野ズレを追いかけるプログラムで、一番求めたい月食中の「地球の本影」を追うものではありません。でもこれらの計算の延長上に、それもそう遠くないところに地球本影を求めることができるのではと期待しています。


赤道儀の制御

あともう一つ、仮に地球本影の視野ズレも含んだ位置を計算できたとして、それをどう赤道儀に伝えるかですが、彗星を追うメカトーフ法というのが応用できるかもしれません。ただし、地球の本影を追うというようなものは見つからなかったので、実際にどういう方法で赤道儀に伝えるのか、どういうデータ形式なのか、地球本影に応用できるかなど、もう少し調べる必要があります。

ガイドソフトのPHD2にもメカトーフに相当するような機能があるらしいのですが、どうも1次の傾きでガイド信号に補正信号を加えていくようなものらしいです。視野ズレのような複雑な動きはできないかもしれませんが、1次補正だけでも近似的にそこそこ地球の影の形はうまく出るのではと思います。もしくは撮影途中で何度か係数を変えるかとかでしょうか。


今後

視野ズレの計算方法や赤道儀の制御など、まだ直接ではないですが答えにつながりそうな幾つかの見通しは出てきました。次回の日本での地球本影が見える月食は2023年10月23日の部分月食だそうです。1年近くあるので、じっくり準備したいと思います。


 
 
 
 
 
 
 
 

前回の記事で、赤道儀を太陽時に合わせ、月食を連続して撮影すると、月をスクリーンにして月食部分の形が地球の形を表すのでは?ということを書きました。



しかしながら結果は、影の形がひしゃげてしまい、位置合わせなしでは地球の形は再現できませんでした。なぜだったのでしょうか?今回はその点をもう少し詳しく議論してみたいと思います。


地球の影固定の座標系

まずは国立天文台のこの図から。
topics02-2-l

まずこの座標ですが、地球の影が動かないような座標系を基準にしています。しかも上が真北です。

これが何を意味するかというと、まず太陽光源に対して地球の位置が動かないような太陽時に合わせた座標ということです。なおかつ、地球の影が真円近くになっているので、(これから書く)月食中の(地球の自転による)観測位置の変化による視野の差を無視したものになっているものと考えらえます。


月の公転軌道による移動量の見積もり

次に基準となる地球の影に対して月が動いていく理由は、月の公転運動が原因です。なんのことはない、月食そのものですね。一月で360度回るとすると、30日で割って1日あたり12度動きます。部分日食開始から部分日食終わりまで約4時間として、6分の1日なので、12度を6で割り、約2度動きます。月の視直径がやく30分(0.5度)なので、月の約4個分となります。上の図で確認すると、部分日食開始から部分日食終わりまで約4.5個分くらいでしょうか?少し誤差がありますが、まあそこそこ合っています。

さて、公転運動なので上の図において西から東へ横に動くのはよくわかります。ではなぜ南から北へ、上向の動きがあるのでしょうか?これは地球の地軸の傾きからきています。地軸に対して垂直な面と、月の公転軌道面に差があるために、地球の上にいる観測者から見ると月が上下に動いているように見えます。月食の時期は冬に近く、北極は一日中真っ暗で、南極は一日中明るいです。日本は北半球にあるので、月食開始の夕方にから夜中にかけて日本にいる観測者は自転により南側に沈み込んでいくような動きをします。月の公転軌道面を地球の公転軌道面に水平だと仮定すると(実際には +/-5度程度の範囲で周期的に動くのですが)、相対的に月は上に昇っていきます。月食4時間で横軸に約2度動くので、地軸の傾きが23.4度とすると、2度 x sin(23.4度)  = 0.8度 = 月の直径の1.6倍となります。上の図で部分食の始まりと部分色の終わりまでの移動距離を見ると、ちょうど説明できるくらいの量ですね。


なぜ太陽時だとズレるのか?

次の画像は、上の国立天文台の図の月の移動位置合わせて、撮影した月を位置合わせして合成したものです。

topics02-2-l_all_frames

左上と右上の枠のズレかたが各位置合わせの様子を示しています。

一方、赤道儀を太陽時に合わせて連続撮影し、位置合わせなしに重ねた図がこちらになります。
output_comp_cut

縦に長く、横に短くなってしまっています。この違いはどこから出てくるのでしょうか?


視野のズレ

答えは前回の記事にも書きましたが、地球の自転によって観測者の位置が移動し、視点の位置がズレることによる視野の違いがこのズレの原因になります。と言っても定量的に評価しない限りは、きちんとこのズレを説明できるかどうかよくわからないので、ここで近似的にですが見積もってみます。

そもそも前回の記事で、
「地球の半径が約6400km、北緯36度くらいにで観察しているので、4時間の間に2 x π x 6400km x cos(46/180*π) x 6hour/24hour = 5400km程度、地球の時点により観測点が移動します。月と地球の距離が約38万kmなので、ざっくり1.4%になりますが、そこまで大きな影響ではなさそうです。」
と書きましたが、これは全くの見積り違いです。前回記事を書いている途中で気づいたのですが、実際そのように考えてもいたので、反省の念を込めて残しておきました。

まずは定性的な話からやり直します。地球から見て月の位置に、月の大きさよりはるかに大きなスクリーンがあると仮定します。赤道儀を用いて、無限遠にある恒星が視野の中で固定されるような追尾を恒星時に合わせた望遠鏡でそのスクリーンを見ているとします(太陽時とのズレは最後の方で議論します)。スクリーンには地球の影が投影されますが、 光源である太陽と地球の間の距離は地球と月の間の距離より十分に長いため、平行光線で投射していると仮定します。そのためスクリーンに当たっている影の大きさは地球の大きさをそのまま表します。

望遠鏡では無限遠の恒星を追尾しているため、望遠鏡の向いている角度は常に同じです。その一方、地球から見たスクリーンは無限遠に比べて十分に近いために、観測地点の位置ズレはそのままスクリーン上での位置ズレになります。すなわち、スクリーン上に映った地球の影を望遠鏡で見ていると、夕方から夜中にかけて時間と共に地球の自転で自分の位置がズレていくために、夕方見ていた地球の影は視野の中で自分の位置のズレと同じ量だけズレていくというわけです。今回の月食では、部分月食初めの頃には撮影画像の左の方にあった地球の影が、部分月食の終わりに頃には自分が地球上で移動したのと同じ分だけ、影の大きさが右にズレていくというわけです。

月は単なるスクリーンです。月食開始時には左の方にいる地球の影の右側を映し、月食終了近くには右の方に移動した地球の影の左側を映します。少なくとも地球の半径くらいのオーダーで観測者である自分は移動しているので、視野の中の地球の影もそのくらいの大きさでズレてしまい、位置合わせなしに重ねると縦長の影に見えてしまったというわけです。


定量的な評価

では実際にどれくらいズレたかざっくり見積もってみましょう。 簡単のためにズレを横(東西)と縦(南北)に分けて考えます。

まずは横ズレ。月食の4時間の間に地球は約60度自転します。スクリーン上への投影は、地球からスクリーンへの方向を自転0度とした時に、部分月食開始から部分月食終了までに19度から79度まで自転します。その時にスクリーン上に投影される移動距離は、赤道上で見ているなら4900km、北極で見ているなら0です。観測点が北緯36度だとすると、移動距離は約4000kmで地球の半径の3分の2くらいになります。地球の影を固定するためにずらして重ねた画像の枠のズレ量の横成分を見てみると、ちょうど地球の影の半径の3分の2くらいになっているので、うまく説明できそうです。

縦ズレはもう少し複雑で、地軸の傾き23.4度を考慮してやる必要があります。自転による上記の横ズレが起きる間に、地軸が傾いている場合地球の公転軌道面と並行な面に対して自転でどれだけ落ち込むかを計算してやればいいはずです。北緯36度にいることも考慮すると、約1600kmとなります。横ズレの半分以下くらいですね。これもずらして重ねた画像の枠のズレ量の横成分を見てみると、ちょうど横ズレの半分以下くらいなのでうまく説明できそうです。

さらに、横ズレは最初夕方近くなので、観測者はスクリーンに対して垂直に動くためゆっくり動き徐々に速くなっていく。縦ズレは最初激しく落ち込み、月が天頂付近に来ると落ち込みが止まることから、落ち込みスピードが遅くなります。枠のズレを見ていると、横ズレのスピードは徐々に速くなり、縦ズレのスピードは徐々に遅くなっていることから、これらのことも説明できそうです。

というわけで、今回の撮影結果と影固定での座標系とのズレは視野のズレというので定量的にも説明できそうなことがわかりました。


太陽時追尾の意味

ところで、今回は赤道儀の追尾設定を恒星時ではなくあえて頑張って太陽時に設定したのですが、はたして意味はあったのでしょうか? 

そもそも、赤道儀の太陽時とは、太陽を観測する際に視野の中にいる太陽が移動していかないようなついビスピーにするということです。太陽は正午に南中するので、閏秒を無視すれば、1日に赤道儀がぴったり1回転するというスピードです。一方、恒星時は1年で一回転する星空の分を補正して追尾するようなスピードです。いつものざっくり計算ですが、1年約360日で360度補正するとすると、1日で太陽時から1度ズレていく計算です。今回の月食の4時間では約15分角ズレます。月の視直径が30分角とすると、月の半径くらいはズレていく計算になり、今回の2つの比較画像でさらにこの補正を入れなくてはならなくなっていたでしょう。

少なくとも光源である太陽のを追尾していたので、ズレを視野角だけに落とし込むことができたという意味では、太陽時追尾にしていたということの意味はあったという結論でいいのかと思います。 


その他誤差

他にもまだ無視できない変化が残っているのか、ここまでの説明でばばっちり動かない影を再現できるのか?細かいところでは例えば、太陽光は実際には平行光でないので影の大きさは地球の大きさより小さくなること、スクリーンである月までの距離が観測者から変わることなど、細かいズレがあるはずです。

これらの誤差は無視できるのかできないのか、それらを含めてこの視野の補正を赤道儀にどう伝えるかを考えて実装し、その後の月食で本当に影が動かなくなるのか検証することになるのかと思います。長々期的な計画ですね。うーん、やっぱり現実的には難しいかな...?


まとめ

最初Twitterの議論で視野による誤差があると聞いて、あまり理解できていなかったのですが、自分で改めて考えることでだいぶん理解できたのかと思います。

やっていることは特に難しいことではなく、それこそ頑張れば中学生くらいでも理解できるようなことなのですが、できる限り文献や資料は見ないで、シンプルに太陽と地球と月の位置関係と、地軸と月の公転軌道だけから、自分頭の中で考えることで色々理解できてくるのはとても楽しいです。しかも実際に撮影したものと正しいと思われる月の見た目の位置関係の比較から、そのズレが計算値とかなり一致し、そのズレ方もうまく説明できたというのは過去の偉人たちの足跡を辿るようで、なんとも言えないいい気分です。

うーん、これだから天文趣味はやめられません。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

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